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DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

今や業種を問わずビジネスシーンに欠かすことのできない、DX(デジタルトランスフォーメーション)。本記事では、言葉の意味や定義、日本企業に必要な理由、導入方法、必要な人材、成功事例など、DXについて様々な視点から解説します。この記事を読めば、DXとは何か?を正しく理解することができるでしょう。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは

はじめに、DXという言葉の定義や成り立ちを整理します。

DXの定義

DX(Digital Transformation)という言葉は、2004年にスウェーデンのウメオ大学教授であるエリック・ストルターマンらが発表した論文『 Information Technology and The Good Life 』の中で提唱されたのが起源だと言われています。

論文ではDXを「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と定義し、情報技術が物理世界のあらゆるものと結びついて変化を起こしつつあることを指摘しています。

一方、日本では経済産業省が2018年に発表した『 DX推進ガイドライン 』の中で、DXの定義をこのように述べています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

DXとデジタル化との違い

「データやデジタル技術を活用する」と聞くと、「デジタル化と何が違うの?」と疑問を持たれる方もいるかもしれません。しかし、 両者には明確な違いがあります。

デジタル化とは、物理世界にデジタルを導入することを指します。例えば、紙の書類を電子化する、業務効率化のためにRPAツール(※1)を導入する。これらは「デジタル化」や「IT化」といった言葉で表すことができるでしょう。

DXとは、デジタル技術を活用して製品・サービスやビジネスモデル、ワークフローそのものを変革し、新しい価値を生み出すことを指します。つまり、デジタル化はDXにおけるプロセスの一つと捉えることができます。

一般的には、紙などアナログで管理しているデータをデジタルデータに移行させることを「デジタイゼーション」、デジタイゼーションしたデータを活用してビジネスや業務の効率を改善することを「デジタライゼーション」、さらにビジネスモデルや商品・サービスそのものに新しい価値をもたらすことを「デジタルトランスフォーメーション」と呼びます。

単純にデジタル化を実現することがDXのゴールではなく、経産省の定義にもあるように、デジタル化を前提に、顧客や社会のニーズに合わせて社内外に新たな変革をもたらすことを目指す必要があるのです。

※1 RPAツール:RPAとは「Robotic Process Automation」の略。ロボットを活用した業務プロセスの自動化を指す。RPAツールとは、人が手作業で行なっていたルーティン作業を中心とした様々な業務にソフトウェアロボットを導入することで自動化し、効率化や生産性向上を実現するツールのこと。

なぜDTではなくDX?

デジタルトランスフォーメーション=Digital Transformationなのに、なぜ「DT」では「DX」と表記するのでしょうか?

英語表現では、「trans-(例:transformation、transferなど)」を「X」と省略することがあります。transformationであれば「Xformation」、transferであれば「Xfer」です。ひと昔前のキーボードに、「XFER 」というファンクションキーがあったことを懐かしく思い出す人もいるかもしれません。

そもそも、なぜtransを「X」と表記するのでしょうか?それは、transの同義語が「cross」であり、crossを視覚的に表現する方法として用いられるのが、アルファベットの「X」だからです。

このような背景から、Transformationが「X」と略され、Digital Transformation=DXと表現されるようになったという説が有力です。

DX(デジタルトランスフォーメーション)普及の背景

IDC によると、2020年から2023年にかけて世界のDX投資額は6.8兆ドルを超え、2022年までに世界のGDPの65%がデジタル化されると予測しています。

国内に目を向けてみても、富士キメラ総研 の調査レポートでは2019年度のDX投資額が8,000億円近くに到達し、2030年には3兆円を超えると予測。富士通 が2020年に世界9ヵ国の経営層や意思決定者900名を対象に実施した調査でも、89%が「デジタルトランスフォーメーションは社会への価値提供に寄与した」と回答しています。

このように、DXが急速に普及・拡大し、成果を生み出している背景には、大きく2つの要因が考えられます。

要因 1:急速に発展した4つのテクノロジー

DXを牽引しているのは、急速に進化し続けるデジタル技術に他なりません。特に下記4つのテクノロジー が、DXの推進に大きな影響を与えていますな手法を選択して実装する能力や知識」を有しているか認定する資格です。

①モバイル技術

スマートフォンやタブレッドなどのモバイルが世の中に浸透し、今や老若男女問わず多くの人たちが利用しています。Webサイトはもちろん、あらゆる商品・サービス、そして社内のイントラネット(※2)に至るまで、モバイルを前提とした設計が必須となっています。

※2 イントラネット:企業など組織内でのみ構築・共有されるネットワーク環境のこと。

②ソーシャル

SNSの普及により、生活者の消費行動は変化し、ユーザー同士のコミュニケーションやSNS上の評判が購買行動に大きな影響を与えるようになりました。この変化に応じて、企業も顧客とのコミュニケーションや情報拡散にSNSを活用するケースが増えています。ビジネスの競争力を高める上で、SNSは欠かせないツールとなっています。

③クラウド

クラウド(クラウドコンピューティング)とは、インターネット上で提供されるソフトウェア・システム開発プラットフォームのこと。従来の企業ネットワーク内で構築される独自のシステム(レガシーシステム)に比べて、汎用性が高く、システムの保守運用は提供元が行うケースが多いため、機能改善がしやすく、運用コストも抑えられます。

④ビッグデータ・アナリティクス

膨大なデータを素早く、的確に分析するコンピューター技術が進歩したことで、企業はあらゆるデータを、マーケティング活動をはじめとする上記4つのデジタル技術は、頭文字を取って「SMAC」と呼ばれることもあります。このSMACに加えて、AIやIoT、5Gといった新しいテクノロジーの登場も、DXの実現を後押ししているのです。

要因 2:新型コロナウイルスがもたらした影響

新型コロナウイルス感染症の流行 は、私たちの生活様式だけでなく、企業活動のあり方にも大きな変化をもたらしました。

在宅勤務や外出自粛、人と人の接触を避ける行動が日常化したことで、これまでデジタル化にあまり積極的でなかった企業も含めて、多くの企業がテクノロジー活用による業務効率化や商品・サービス改善を推進。ビジネスモデルや組織形態そのものを変革するケースも急増しました。

この変化こそがまさにDXであり、実際に電通デジタルの調査 では50%が「新型コロナウイルス感染症の拡大がDX推進を加速させた」と答えています。

日本企業にDX(デジタルトランスフォーメーション)が必要な理由

ここでは、特に日本企業においてDXが必要とされている理由をいくつか紹介します。

「2025年の崖」問題

日本でDXが大きな注目を集める転機となったのが、経済産業省 が発表した『DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜』(通称:DXレポート)です。

このレポートでは、多くの経営者がDXの必要性を理解しているにもかかわらず、既存システムの複雑化・老朽化・ブラックボックス化、IT人材不足といった問題に対処できていない点を指摘し、「この課題を克服できない場合、DXが実現できないのみでなく、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性」があると警鐘を鳴らしました。

このリスクは「2025年の崖」と名付けられ、メディア等で頻繁に取り上げられたことも相まって、DXという言葉が広く浸透するきっかけとなりました。

レガシーシステムのリスク

DXレポートで言及されている「レガシーシステムのリスク」について、もう少し詳しく説明します。

レガシーシステムとは、技術面の老朽化、システムの肥大化・複雑化、ブラックボックス化等の問題を抱え、経営・事業戦略上の足かせ、高コスト構造の原因となっているシステムのことを指します。

古いシステムは度重なるメンテナンスやアップデートで肥大化・複雑化する傾向にあり、技術面では老朽化が進み、さらに開発担当の社員が退職するなどでシステムの中身を理解できる人材がいない=ブラックボックス化を引き起こすリスクがあるのです。

日本情報システム・ユーザー協会が2017年に実施した調査によると、約8割もの日本企業がレガシーシステムを抱えており、これがデジタル化の足かせになっていることは言うまでもありません。

ステークホルダー及び株式市場からの評価

経済産業省は東京証券取引所と共同で、デジタル技術を前提としてビジネスモデル等を抜本的に変革し、新たな成長・競争力強化につなげるDXに取り組む企業を、「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」として選定・公表しています。

つまり、日本ではDXに取り組むことで株式市場から注目を浴び、投資家を含むステークホルダーからの評価を得られるような仕組みが確立されているのです。

さらに、DX銘柄の中から特にデジタル時代を先導する企業を「DXグランプリ」として選定する仕組みもあり、DXに取り組むことで株式市場における競争優位性を高めるチャンスも生まれてくるのです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)推進における課題

今や業種を問わず様々な企業がDX推進に取り組んでいますが、必ずしもうまくいくとは限らないのが難しいところです。DX第一人者とされるIMDのマイケル・ウェイド教授は「世界の企業が取り組むDXの95%は失敗に終わっている」と述べます。DXが失敗または想定通りに進まないのはなぜでしょうか?いくつか考えられる要因を挙げます。

経営層の理解不足

DXは経営層から現場の隅々まで浸透させる必要がありますが、特に企業のトップがDXの本質を正しく理解し、思い描いたビジョンを社員に伝えていくことが重要です。逆にDXを単に「業務効率化」「デジタル化」などと捉えていたり、DXで実現したい未来が曖昧だったりすると、自社のDXを成功に導くことは難しいでしょう。

経営戦略の不在(場当たり的DX

DXを実現していく上では、デジタル技術を活用してビジネスをどのように変革するかという経営戦略の策定が欠かせません。戦略なき技術起点のデジタル導入は疲弊と失敗のもとであり、流行りのツールや手法を場当たり的に取り入れるだけではうまくいきません。

実態を無視した戦略

DXのゴールがビジネスモデルの変革だからといって、いきなりイノベーションを起こすような壮大な計画を立ててはいけません。DXの第一歩はアナログデータのデジタル化であり、次のフェーズが業務プロセスのデジタル化、その先にようやく新しい価値創造の可能性が見えてきます。

ゴールを見据えながらも、まずは自社の業務の中からすぐにデジタル化できることを探してスモールスタートし、 小さな成功体験を積み重ねながら徐々にプロジェクトを広げていくことをおすすめします。

レガシーシステムの再生産

先述したとおり、レガシーシステムはDX推進に立ちはだかる壁です。この問題は根深く、せっかくレガシーシステムから脱却するためにDXを推進したのに、いざシステムを刷新する段階で、「自社の特色に合わせてカスタマイズしよう」、あるいは「セキュリティが不安だからクラウドではなく自社ネットワーク内にシステムを構築しよう」とした結果、レガシーシステムを再生産してしまうケースが少なくありません。

もちろん、必ずしもレガシーシステムが「悪」というわけではありませんが、レガシーシステムのリスクをしっかりと把握した上で、 用途や目的に応じてシステム運用の方法を適切に判断することが大切なのです。

社内外のデジタル人材不足

システム開発や運用を外部に丸投げすると、自社にノウハウや技術が蓄積されないため、ブラックボックス化を引き起こしやすくなります。

しかし、現実的には高度なITスキルを持つデジタル人材が社内にいるケースが少ないため、DXを推進するにあたって新たに人材を確保する必要があるのです。ただし、経産省の委託事業として実施されたみずほ情報総研の調査でIT人材の需要ギャップ(供給不足)が2018年で22万人に到達したとあるように、社会的なデジタル人材不足により、採用競争は激化しているといえるでしょう。

部分的DX

DXは部署や業務単位で進めることが多いと思いますが、一部の社員、一部のチームに浸透するだけでは、本質的な意味でDXを実現することは難しいでしょう

DXは部署や拠点をまたがり、経営層から現場まであらゆる人に浸透させることで、ビジネスモデルや組織の変革といった大きなインパクトをもたらすことができるのです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)導入の5ステップ

では実際に、DXを推進するにあたってどのようなプロセスを通過する必要があるのでしょうか。その手法は企業よって様々ですが、ここでは電通アイソバーが提唱する5つのステップを紹介します。

ステークホルダー及び株式市場からの評価

①デジタル化

様々なツールや書類等をデジタル化し、大量のデータを蓄積します。

②業務効率化

各部署でデジタル化したデータを活用し、業務効率化を図ります。

③データ共有化

部署を横断してデータ活用の基盤を作ります。

④組織化

データ活用を円滑に行うための運用体制を作ります。

⑤最適化

データから導き出された情報をもとに、事業やビジネスモデルを最適化します。

DX(デジタルトランスフォーメーション)に求められる人材

DX成功の可否を握るのは、人材といっても過言ではありません。ここではDX人材の種類と、DX人材に必要な能力を整理します。


人材の種類 役割 必要な能力
プロデューサー DXプロジェクトの統括・主導(CDOを含む) リーダーシップ、課題を発見する力、マネジメント能力、外部環境を把握・予測する力
ビジネスデザイナー DXの具体的な企画立案・推進 企画力、実行力、調整力
ITアーキテクト プロジェクト計画に基づくシステム設計 設計スキル、課題を発見する力、分析力
データサイエンティスト/AIエンジニア データ分析の企画、データ集計、機械学習や統計モデルの作成 ビジネススキル、データサイエンスのスキル、データエンジニアリングのスキル
UI(※3)デザイナー DXに関連するシステムやサービスのデザイン UIデザインスキル、コミュニケーション能力
ITエンジニア/プログラマー システム実装やインフラ構築 ウェブエンジニアリングのスキル、プログラミングのスキル、コミュニケーション能力

※3 UI:「User Interface」の略。ブランドや商品・サービスとユーザーとの接点のことを指す。例えばWebサービスであれば、PCやスマートフォンなど各種デバイスに表示されるデザインやフォント、画像、メニューなど、ユーザーが接触する全ての情報がUIに含まれる。

DX人材の育成方法

これまでに述べてきたように、DXは経営層から現場まで隅々に浸透している状態を作ることが理想的です。そのためには社内にDX人材を集めることが欠かせません。ここでは、社員への啓蒙活動も含めた、DX人材の育成方法をいくつか紹介します。

経営者・経営層向けの教育プログラム導入

経営層の理解なくして、企業のDX成功はあり得ません。最近は経営者や役員に向けて、DXの基礎知識や経営的観点からDXを学べる教育プログラムが増えています。まずは経営層がDXを正しく理解し、DX推進にコミットする状態を作ることから始めましょう。

全社向けハンズオン講座や講演会の開催

社員によって、DXやITに関するリテラシー、データ活用スキル、DXに対する意欲はまちまちです。ファーストステップとして大切なのは、全社に向けてDXに取り組むことの重要性を啓蒙し、デジタル化やデータ活用の文化を醸成すること。その方法として有効なのが、外部講師を招聘したハンズオンセミナーや講演会の開催です。

DX推進人材や専門スキル人材の採用

社内にDX人材がいない場合、社員をイチから育てるのではなく、外部からDX人材を確保することも有効です。

いきなり全員を揃えるのが現実的に難しい場合、テクノロジーやデータ活用を前提とした事業モデルを経営視点で創出できるプロデューサーやビジネスデザイナー、専門的かつ高度な分析やシステム構築を担うデータサイエンティストやITエンジニアなど、DXの実行に欠かせない人材から少しずつ集めていくと良いでしょう。

スタートアップなど外部連携を通じたDX活性化

企業によっては、DXを社内だけで完遂することがなかなか難しいケースもあります。その場合は、外部企業との連携を通じて自社のボトルネック解消や、DX推進を進めるのも一つの手です。

特にスタートアップ企業は社会に対する鋭いアンテナ、特定領域にフォーカスした強力なケイパビリティ、圧倒的なスピード感で事業を進める力といった特長があるため、それらを自社の強みと掛け合わせることで、ビジネスモデルの変革を見据えたDXを一気に加速させることができる可能性もあるのです。

業種別DX(デジタルトランスフォーメーション)成功事例

DXはIT企業のみならず、様々な業界に浸透しつつあります。実際にDXを導入することで成果を生み出した企業の事例を業種別に紹介いたします。

【製造業】トヨタ自動車

トヨタはモビリティ社会の到来に向けて、「次期営業活動システム」を新たに構築。従来のオンプレミス(※4)型基幹システムとクラウド型CRM(※5)「Salesforce」を連携し、顧客情報の一元管理を行いました。このシステムを各販売会社に提供することで、基幹システムのデータとSalesforceのデータを迅速に連携できるようになり、各販売会社の営業活動や意思決定スピードを著しく向上させることに成功しました。

この施策でポイントとなるのは、全国約280の販売会社に営業活動の課題をヒアリングした上でシステムを構築した点にあります。 各店舗は地域や顧客の特性に合わせて、営業スタイルも営業ツールもKPI設定も様々。 それをトヨタ側で統一してはかえってデメリットを生むことから、フローや使用ツール、KPIなどのフロント部分は各社でカスタマイズできるように仕様を構築したのです。

※4 オンプレミス:サーバやソフトウェアなどの情報システムを自社で保有し、社内の設備環境で運用する方法のこと。対義語としてよく用いられるのが、第三者が提供する仮想サーバやソフトウェアを外部利用する方法を指す「クラウド」である。

※5 CRM:「Customer Relationship Management」の略。日本語では顧客関係管理(顧客管理)と表現されることが多く、顧客情報を収集・分析することで最適なコミュニケーションや営業アプローチを確立し、商品・サービスの競争力を高める営業手法を指す。

【飲食業】ゑびや

三重県伊勢市の「ゑびや大食堂」は1912年創業の老舗飲食店。同社は「勘と経験」に頼る俗人的な経営からデータドリブン(※6)な経営へと舵を切るべく、日々の来店データをエクセルで記録することからスタート。その結果、大量の食品ロスが経営を圧迫していることがわかり、毎日の来店数や注文数の予測と適切な人材配置を行うために、画像解析カメラやAIシステムなど様々なテクノロジーを駆使し、店舗内のデータのみならず気象データや近隣施設の来店数など複数のデータを掛け合わせることで、高精度な予測AIシステムを実現。食品ロスを75%以上減らすことができました。

同社は2018年に「EBILAB」を設立し、このシステムをベースにしたクラウド型店舗分析サービスの販売をスタート。 業務改善のDXから新たなビジネスモデルを確立した好例といえるでしょう。

※6 データドリブン:ビッグデータや顧客情報、Web解析ツールなどから得られる情報・分析結果をもとに経営戦略やビジネスの意思決定を行うこと。

【不動産業】三井不動産

三井不動産は2016年から決済・会計の基幹系システムの全面リニューアルをスタート。もともと独立していた決済システムと会計システムを統合し、 押印レス・ペーパーレス・モバイル化を推進。さらにシステムのフルクラウド化、業務標準化などに取り組み、受発注・会計業務を35%削減しました。

また、全グループでのDXを加速させるため、DX本部、スタートアップ連携を推進するベンチャー共創事業部、 不動産テックでイノベーションを起こすビジネスイノベーション推進部など計5部門が連携するDX推進組織「イノベーションハブ」を立ち上げ、 各事業部・グループ会社・社外パートナー企業とのDXを軸とした共創を目指しています。

【金融業】三菱UFJフィナンシャル・グループ

以前からデジタルトランスフォーメーション戦略に取り組んでいた三菱UFJフィナンシャル・グループは、 2020年4月に亀澤宏規氏が代表取締役社長に就任しました。彼はCDTO(Chief Digital Transformation Officer)として同グループのDX化を牽引してきた人物。 三菱UFJ銀行の頭取を経験せずにグループCEOに就任するのは同氏が初めてであり、異例の抜擢に同グループのDXに対する本気度がうかがえます。

そんな同グループが行うDXは、個人向け・法人向け・技術活用の3分野29項目にも及びます。特にフィンテック領域は同社が日本の業界を牽引していると言っても過言ではなく、 フィンテックに強い専門人材を迎え入れる、フィンテックベンチャーと積極的に協業するなど、積極的に取り組みながら銀行の未来像を模索しています。

【物流業】日本通運

ドライバー不足や荷量の増加などの課題を抱える物流業。日本通運はこれらの課題を解決すべく、ソフトバンクと共同で新会社「MeeTruck」を設立。物流事業者向けのクラウド型配車支援サービスを提供しています。同サービスを利用する物流事業者は、受注した配送業務の案件登録やトラック配置、勤務表など、これまでアナログで管理することの多かった業務をクラウド上で作成し、データを一元管理できるようになります。今後は、AIやビッグデータなどのテクノロジーを活用して物流事業者と荷主企業のマッチングサービスを展開する予定です。

【アパレル業】グンゼ

1896年創業の老舗アパレルメーカーのグンゼは、衣類のIoT化の一環として、 着るだけで生体情報を取得できる特殊繊維を開発。着用者の姿勢や動き、消費カロリー、心拍数といった情報を計測し、専用アプリで生体情報を確認できます。

同社はこれらの情報を用いて、顧客に役立つアドバイス提供や、分析データを元にした商品開発などを展開。 従業員の体調管理など、新たなビジネスを開拓する構想も練られています。

【教育業】トライグループ

全国に家庭教師事業を展開する「家庭教師のトライ」は、顧客の生活スタイルの多様化や中高生のスマートフォン利用率の増加を背景に、 2015年より映像学習サービス「Try It」しています。これはトライの生徒に向けて、いつでもどこでも自分が受けたい授業をPCやスマホで受けられるもの。キーワードから授業を検索できるシステム、 1.4倍速再生、全国の勉強仲間との競争を促すランキングシステムなどが大きな話題となり、教育ビジネスそのものにインパクトをもたらしました。

【医療業】渋谷区医師会

コロナ禍以前からITを活用した医療システムの改革に取り組んでいた渋谷区医師会は、 地域住民や渋谷区で働く人に「かかりつけ医」を普及する手段として、クリニック予約・デジタル問診票システム「CLIEN」を導入。

同サービスは、近隣のクリニックや病院をPCやスマホで簡単に検索・予約ができるもの。さらに、事前に問診票を入力できるため、 クリニックや病院に着いてから問診票をアナログ入力する必要がなくなり、 医療提供者側も患者のデータを連携させることで、地域住民一人ひとりに適切な医療サービスを提供できるようになります。

この取り組みは厚生労働省主催の「上手な医療のかかり方アワード」で「厚生労働省政局長賞(医療関係者部門)優秀賞」を受賞。 地域医療のデジタル化を促すモデルケースとして注目を集めています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)成功の秘訣

ここまでに述べてきたDX推進における課題や成功事例を踏まえながら、DXを成功させるための要諦をまとめます。

トップや事業責任者の意識改革

DXは既存の組織構造や業務プロセス、使い慣れたシステム・ツールなどを刷新するため、企業に与える影響が大きい改革となります。 そのため、いくら現場でDXの重要性を認識していたとしても、経営者や事業責任者がDXの必要性やメリットを理解していなければ、全社的に取り組むことは難しいでしょう。

三菱UFJフィナンシャル・グループがDX最高責任者をCEOに大抜擢したように、大胆な企業判断も時には必要になります。 そして、経営者自身がDXに対する明確なビジョンや覚悟を示し、十分な予算とリソースを投入しながら、積極的に関与することがDX成功の鍵を握るのです。

スモールスタートを心がける

企業としてDXのビジョンやゴールを掲げることは重要ですが、一方でDXに取り組んだことがない組織が、いきなり全社で大きなことに挑戦するのはあまり現実的ではありません。 大風呂敷を広げた壮大な計画書作成に1年もかかってしまったり、社内から反発を受けて途中で計画が頓挫しては本末転倒です。

DXを実現させるためには、まずは個人や小さな組織でテスト導入できることや、すぐに着手できる身近なデジタル化からスタートすることをおすすめします。 そこで業務効率改善の実績を作れたら、徐々に複数組織、そして社内全体に「身近にできるデジタル化」を広げていきます。

このようにして、小さな成功体験を積み重ねていくと、DXの効果を自分ゴトとして体感できる社員が増えていき、 慣れ親しんだルーティーンを変えてでもDX化に取り組むことの意義を実感できるようになるでしょう。

ゑびやも、最初は「エクセルに日々の来店数や注文数を記録する」という小さな取り組みから始めて、徐々に定点カメラの導入やAIシステムの活用などでDXの規模を広げ、 最終的には店舗分析サービスという既存事業とは異なる新たなビジネスを生み出すことに成功しました。

簡単にできることからスタートし、社内にDX化の土台を作る。そうすれば、「もっと効率化できることはないかな?」 「この業務もデジタル化しようよ」と各所で次々とアイデアが生まれるようになり、DXプロジェクトがどんどん本格化していくはずです。

タテ・ヨコの適切な情報連携

経営層の意識改革がDX推進に欠かせないことはすでに述べましたが、DXを実行する現場から経営層や各部署に働きかけることも大切です。

DXは経営に大きなインパクトを与えうる変革であるからこそ、経営層が描くビジョンと現場の施策にズレが生じることがあってはならず、 経営層と一丸となって取り組まなければ成功に導くことはできません。 現場がどんなに重要な施策だと思っていても、経営層からの理解や賛同を得られなければ、プロジェクトが打ち切られる可能性もあるでしょう。

また、DXは単なるデジタル化やツールの切り替えではなく、業務プロセスや仕事のあり方そのものを変える取り組みであるため、 他の部署の社員が不満や疑問を抱かないように適切な情報共有とコミュニケーションが必要になります。

トヨタ自動車は効率化一辺倒でツールを構築するのではなく、ツールを活用する販売店と綿密なコミュニケーションをとった上で、 もっとも最適なツールを構築することで、営業効率を最大化させることに成功しました。

このように、DXはタテ・ヨコの適切な情報連携を行いながら進めていくことが重要なのです。

外部パートナーとの連携

先述したように、DXの実現にはデータアーティストやITアーキテクトなど様々な専門人材の存在が欠かせません。それゆえに、 自社のみでDXプロジェクトを完遂させることは現実的にはなかなかハードルが高く、実際に多くの企業・団体が外部パートナーと連携してDXを推進しています。

DX専門のコンサルティングを行う会社や、システム開発・実装などを担うITベンダー、SIer(※7)、DX関連セミナー・イベント会社など、 外部パートナーがカバーできる領域は多岐にわたります。また、特定の業界や業種に特化したDX関連サービスも増えており、外部パートナーの選択肢も広がっています。

自社で内製化できる部分とできない部分を整理した上で、目的や課題に応じて適切な外部パートナーと連携することが、DXを成功させるポイントになるでしょう。

※7 Sler:「System Integrator(システム・インテグレーター)」の略。「エスアイアー(エスアイヤー)」と読む。情報システムの企画・コンサルティングから設計、開発、運用、保守などを一括して請け負う企業のこと。

 
 

今後もDAでは情報を追加し更新を行っていきますので、引き続き新たな情報も是非ご覧ください。