2021.11.30

データ分析とは

IT技術の進歩やデジタルシフトが進み、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進も加速する中、ビジネスのあらゆる局面において、データを活用した意思決定の重要性が高まっています。本記事では、データ活用の核とも言えるデータ分析について、基本的な考え方やメリット、具体的な手順や手法、必要な人材や体制などを、詳しく解説いたします。

データ分析(データアナリティクス)とは?

データ分析とは、必要なデータを収集し、それを目的に応じて分類・整理・成型して分析を行い、導き出された客観的事実に基づいて物事の判断や意思決定に活用することを指します。これらの作業はデータ分析のほか、データアナリティクスという言葉が用いられることもあります。

IT技術が進展し、人びとの生活にデジタルが浸透したことで、我々がアクセスできるデータは急激に増加し続けています。それに伴い、ビジネスにおいても膨大なデータを意思決定や課題の発見、ビジネス機会の創出につなげようとする動きが加速し、様々な業種であらゆるデータを収集し、活用しようとする企業が増えています。また、近年はデータ起点の「DX」も業種問わず様々な企業で積極的に推進されています。

一方、膨大なデータを収集しているにもかかわらず、うまく活用できていない企業も少なくありません。データ分析を成功させるためには、その仕組みや手順を正しく把握した上で、適切な人材やスキルを手配して実行することが欠かせないのです。


そもそもデータとは?

データとは、客観的で再現性のある事実や数値のこと。データと聞くと、コンピュータで処理する数字をイメージしがちですが、数字に限らず文章や画像などもデータに含まれます。ビジネスにおけるデータ分析で取り扱うデータも多岐にわたります。一例として、下記のようなデータがデータ分析に活用されています。

・売上データ ・POSデータ ・行動データ ・営業データ ・人事データ ・マーケティングデータ ・カスタマーサポートデータ ・顧客属性データ ・アンケートデータ ・映像データ ・位置情報データ

これらのデータは、現状の正確な把握や課題の抽出、未来予測に役立つ有用な判断材料となり、近年は複数のデータを掛け合わせて分析を行うケースも増えています。


データ分析の重要性

データ分析が重要視される背景には、IT技術の劇的な進歩があります。デジタルが世の中に浸透したことで、企業も生活者もあらゆるデータを活用できるようになりました。
しかし、同時にニーズも細分化したため、従来の勘や経験だけに基づく分析では多様なニーズを正確に捉えることが難しくなり、客観的なデータを用いて確度の高い分析を行う必要が出てきたのです。データをもとに意思決定を行う「データドリブン」という概念も生まれ、日々蓄積されるビッグデータの価値は年々高まっています。

近年のビッグキーワードである「DX」も、データ分析へのニーズ急増の要因になっています。DXを実現するためには、これまでアナログで管理されていた情報や、データ化はされているが整理・統一されていない情報を、課題や目的に合わせて収集・整備し、業務プロセス改善や効率化、合理的判断のためにデータ分析を行うことが欠かせません。

一方、ビッグデータはあくまでもデータであり、うまく活用ができなければ宝の持ち腐れになってしまいます。そのため、企業ではデータ分析の質や精度を高めることが重視されるようになり、近年はデータ分析を企業経営に取り入れるケースや、データサイエンティストなどのスペシャリストを積極的に採用する企業も増えています。


データ分析のメリット

データ分析には大きく3つのメリットがあります。

1. 精度の高い現状分析や未来予測

客観的なデータに基づく確度の高い分析が可能になるため、市場動向や売上推移などの現状把握や未来予測がより正確にできるようになります。売上アップやシェア拡大のための重要な施策検討にも役立てることができます。

2. 新しい課題やビジネスチャンスの発見

データ分析では社内外に分散されている情報を集約し、データ同士の相関関係や因果関係を明らかにしながら、新たな洞察を導き出します。すると、これまで見えていなかった問題点や気付きが得られ、ビジネスのヒントにつなげることができます。業務の効率化はもちろん、売上の改善や新しい市場の開拓、これまでにないビジネスを創出する可能性すら秘めているのです。

3. 意思決定スピードの向上

ビジネスは意思決定の連続で成り立っています。その一つひとつの意思決定が会社の利益や成長、顧客の満足度に直結するため、迅速・正確に行う必要があります。しかし、従来の意思決定は人の主観や経験に頼る部分が多く、合意形成に時間がかかるケースや、判断基準が曖昧なケースも少なくありませんでした。

データ分析を導入することで、企業の課題解決や未来予測に必要なデータに素早くアクセスできるため、スピーディーかつ客観的な意思決定が可能になります。予測が難しく変化が早い現代社会では、意思決定のスピードが企業の成長を大きく左右すると言っても過言ではありません。


データ分析のステップ

ここからは、データ分析を実施する方法について具体的に紹介します。データ分析には単純なデータ処理だけでなく、その前後で様々な作業が発生します。まずはデータ分析の具体的な手順について、ここでは4つのステップに分けて紹介します。

1. 目的設定

データ分析で最も重要なのが、「何のためにやるのか?」という目的を明確にすることです。目的が曖昧だと、不必要な分析に時間をかけてしまったり、途中で計画があらぬ方向に行ったり、結果を有効活用できなかったりする可能性があります。

なぜデータ分析を導入する必要があるのか、データ分析で成し遂げたいゴールは何なのかを、組織内で決めることから始めましょう。

2. 計画

目的とゴールが明確になったら、次はデータ分析の具体的な計画を立てます。後ほど詳しく説明しますが、データ分析には様々な手法があるため、今回の目的を達成するためにどのような分析手法が適切なのかを考える必要があります。

また、収集すべきデータの選定、評価方法、目的の達成基準なども具体化しておきましょう。これらの項目を詰めていくと、徐々に今回のデータ分析で目的を達成するために必要な時間やコスト、ボトルネックとなるポイントなどが明らかになっていきます。データ分析に期待する成果に対してコストや時間、能力が見合っているのかを冷静に判断することも忘れないようにしましょう。

3. データ収集・加工・分析

目的にそぐわないデータを取得することは無駄を生み、データ分析の精度を低下させることにもなりかねません。分析対象となるデータの選定はもちろん、効率的かつ正確にデータを収集する方法も検討する必要があります。

また、収集したデータがそのまま分析に使えると限りません。データの定義がバラバラだったり、整理されていなかったり、不必要なデータが混ざっていたりするケースも良くあります。そのため、データを分析できる形に加工する作業が必要になります。

このような地道な作業を経て、データが分析できる状態になったら、計画時に選定した分析手法でデータ分析を実行します。収集→加工→分析という一連の作業は専門性が求められるため、社内にデータサイエンティストなどの専門人材がいない場合は、外部のリソースを活用したり、分析ツールやシステムを導入することをおすすめします。

4. 洞察

データ分析によって導き出された分析結果は単なる客観的事実でしかありません。この結果を洞察し、設定した目的に対するアクションを提示することで、初めて分析結果に意味が生まれます。洞察は、データ分析の各ステップの中でも最も重要な作業であると言えるでしょう。


データ分析の手法

先述したとおり、データ分析には様々な手法があり、目的や用途、データの特徴などに合わせて適切な手法を選定する必要があります。ここでは多種多様な手法の中から、代表的なものをいくつか紹介します。どのような分析手法があるのかを大まかに把握するためにお役立てください。

線形回帰分析

予測・説明したいデータを「目的変数」と定義し、その予測・説明のために用いるデータを「説明変数」と定義し、予測や説明を導き出す手法です。
例えば、身長の伸びを予測したい時、体重を説明変数に設定し、体重の増加ともに身長がどのくらい伸びるのかを予測することができます。説明変数が1つの場合を「単回帰分析」と呼び、説明変数が複数ある場合を「重回帰分析」と呼びます。
例えば、お店の1日の売上を予測したい時、天気や気温、最寄駅の降車人数といった複数のデータを用いるのが「重回帰分析」です。

判別分析

複数の属性データをグループ分けし、未判別のデータがどのグループに属するものかを判別する手法です。
例えば、既存顧客を年齢、性別、地域、収入といった属性データをもとにグループ分けし、見込み顧客の属性データと照らし合わせることで、見込み顧客が顧客になるかどうかの予測や、顧客になるための要因などを推論することができます。

クラスター分析

クラスターとは、「集団・群れ」を意味する言葉。膨大なデータの中から類似した性質を持つものをクラスターとしてグルーピングし、クラスターごとの特性や傾向を分析する手法です。
クラスターの性質に応じて訴求方法を変えるダイレクトマーケティングやOne to Oneマーケティングなどによく活用されています。

ABC分析

複数のデータに優先順位付けを行い、重要度に基づいて分類をする手法。注力すべき施策の絞り込みや売れ筋商品の把握などに役立てることができます。

決定木分析

一つの結果について、それに紐づくデータを仮説ごとに段階的に分割していき、結果に影響を与えた要因分析や未来予測を行う手法です。仮説ごとに分析結果が次々と枝分かれしていくことから、「決定木」と呼ばれています。

アソシエーション分析

一見すると関連性がないように思える複数のデータから関連性を見つけ出して仮説を立て、隠された相関関係を分析する手法です。
有名なケーススタディが「ビールと紙おむつ」です。2つの商品は関連性がないように思えますが、ビールと紙おむつが頻繁に合わせ買いされるパターンを分析したところ、相関関係があることがわかり、実際にスーパーでビールと紙おむつを近くに陳列すると売上が上がったという事例があります。


データ分析で気をつけるべきポイント

データ分析がビジネスを成長させる手段として有効であることは間違いありませんが、ただ導入しただけで期待する効果が得られるものではありません。むしろ、間違った運用をしてしまうと、成果が出ないのにコストや労力だけかかってしまう可能性も。データ分析の力を最大限に生かすために、注意しておきたいポイントをいくつか紹介します。

データ分析を目的にしない

繰り返しになりますが、データ分析はあくまでも手段なので、データ分析を行う目的や目指すゴールを明確にすることが大切です。分析手法を考えたり、分析対象となるデータを収集・整理したりと、やるべきタスクはたくさんありますが、常に目的を意識しながら作業を進めるようにしましょう。

主観的なバイアスに気をつける

データ分析では、客観的なデータの中にある因果関係や相関関係、規則性などを正しく見出すことが重要です。主観や経験則に基づく仮説を立てることは決して悪いことではありませんが、仮説に固執しすぎると、収集するデータの選定や分析結果への洞察にバイアス(偏り)が生じてしまうかもしれません。人間の主観にはバイアスが生じる可能性があることを忘れずに、時には仮説の再構築や方向転換を判断することも必要です。

「データは多ければ多いほど良い」は間違い

データ分析の導入を検討している企業の中には、「もう少しデータが溜まってから始めよう」と考えている担当者の方もいるかもしれません。もちろん、データ収集はデータ分析における重要なステップですが、かといって大量のデータを集めることが必ずしも良い結果につながるとは限らないのです。

目的や分析手法にそぐわないデータを分析対象に含めてしまうと、分析に時間がかかるだけでなく、分析の精度が落ちてしまうことも。AIや機械学習を活用することで、少ないデータ量でも高精度な分析結果を導き出せる場合もありますし、逆にじっくり溜めたデータがほとんど使えなかった…というケースもあります。データが溜まってからツールを導入したり、社内外のデータサイエンティストに相談するのではなく、初期段階から専門家を交えて目的達成に必要なデータを収集するほうが間違いなく効率的なのです。


データ分析に必要な人材や体制

データ分析でカギとなるのは、データ分析スキルを有する人材を育成・確保し、データ分析が機能する組織体制を構築することです。ただ、企業の業種や規模、状況によって実現できる方法は異なるので、ここではデータ分析に必要な人材・組織づくりという観点からいくつかの打ち手を紹介します。

データサイエンティストを登用する

データサイエンティストは、データを取り扱うプロフェッショナルです。データサイエンス(データに関する総合的な学問)を駆使しながら、目的に合わせた分析手法の提案、データ収集・加工・分析ができるだけでなく、分析結果に対する洞察や解決策を導き出すなど、施策立案や課題解決の領域も担います。

近年、様々な業種でデータ活用の重要性が叫ばれるとともに、データサイエンティストへのニーズも高まり続けています。社内にデータサイエンティストがいることは大きなアドバンテージになりますが、引く手数多の優秀なデータサイエンティストを採用することは簡単ではありません。その場合は、社外のデータサイエンティストをパートナーとして迎え入れることも一つの手です。

データ分析のプロジェクトリーダーを配置する

データに関する専門家を登用できなくても、専門ツールを導入することでデータ収集・加工・分析などの作業をある程度補うこともできます。しかし、ツールを使うにしろ、外部パートナーに依頼するにしろ、プロジェクトを推進するリーダーがいなければ、データ分析の力を十分に活用することはできません。

例えば、データから得られた洞察を、新しい事業モデルや改善策に落とし込んだり、組織のキーマンや意思決定者に説明ができる人材が必要なのです。データに詳しい人材がベストですが、そうでなくても戦略策定・設計・実装ができる人や、社内政治も含めた調整ができる人材が適しているでしょう。

データ教育を進める

データサイエンティストのような高度な専門スキルを持った人材をイチから育てるのは難しいかもしれません。ただ、データ分析に関する外部の講座や教育サービスも活用しながら、データやAI、デジタル分野に関する一定の専門スキルを担当者に身につけてもらったり、一般社員向けに必要最低限の知識やリテラシーを教えたり、経営層・管理者にデータ経営に必要な知識や考え方をインプットすることで、データに強い組織にしていくことはできるのです。


データ分析の成功事例

データ分析に期待できる成果やビジネスインパクトをより具体的にイメージしていただく手がかりとして、データ分析の成功事例を紹介します。

スシロー

回転寿司チェーンのスシローは、寿司皿にICタグを設置し、どの店舗で、いつどんな寿司がレーンに流れ、食べられたのか、それとも食べられずに廃棄されてしまったのか、テーブルオーダーの情報も含めてすべてのデータを取り、年10億件以上のデータを蓄積。需要予測を行い、レーンに流す寿司の種類や量を調整し、廃棄量を減らすことができました。

ゲオ

ビデオレンタルショップのゲオは、スマホ会員証を基点にしたチャネルの一元管理・分析を推進するために、ビッグデータ分析の担当部門を設置。データマイニングを自動化するツールを導入し、顧客データの解析をしました。すると、「作品Aを借りた人は作品Bも借りる」といった、これまで見えてこなかった相関関係の可視化に成功。これらの分析結果をもとに、レコメンデーション機能を強化しました。

すかいらーくグループ

全国各地にレストランを展開するすかいらーくグループは、全国のレジから集めた大量のPOSデータと、天気や地図、クーポンなどの周辺情報を掛け合わせ、リアルタイム分析を行うシステムを構築。これまでは2日間を要していた分析をわずか数十秒で実現できるようになり、仮説検証サイクルもより短時間で回せるようになりました。

ローソン

コンビニエンスストアチェーンのローソンは、会員カードを介して顧客データを収集し、データ分析を開始。すると、たった1割のヘビーユーザーで店の売上の6割を構成していることがわかりました。さらに、リピート率にフォーカスして分析したところ、あまり売れ筋ではない商品が一部の女性客から熱烈に支持されていることが明らかになりました。データの声に耳を傾けた結果、通常であれば販売終了してもおかしくない商品を売り続けるという判断を下し、ヘビーユーザーの確保に努めています。

八千代エンジニアリング

総合建設コンサルタント会社の八千代エンジニアリングは、河川のコンクリート護岸の点検に必要なコストや手間、俗人的な判断基準を解決するために、ディープラーニングを活用して撮影画像から劣化の有無を自動判断するアルゴリズムを導入。目視点検と遜色ない精度のロジックを実現し、現場での対応工数を5分の1に削減しました。

三井化学

化学メーカーの三井化学は、化学プラントの最適な運転手法を模索すべく、蒸気・電力量の変動予測をもとに最適化された運転手法を事前に決定するシステムを構築。プラントの稼働・非稼働実績データと、蒸気の使用実績データの相関関係を分析・学習で明らかにし、工場の省エネルギーと生産性向上に貢献しました。


最後に

これらの事例のように、データ分析は多種多様な業界のあらゆるシーンで活躍し、生み出される成果も売上アップからマーケティング最適化、業務効率化、DX推進と多岐にわたります。今回ご紹介したデータ分析の魅力やコツが、検討している方の背中を押し、データ分析にチャレンジする企業が増えることを願っています。

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