AI × スポーツ
近年のAI技術の飛躍的な発展に伴い、様々な分野でAI(Artificial Intelligence:人工知能)が人間の活動をサポートしてくれるようになっています。今回の記事では、特にAIとの親和性が高いスポーツ分野における活用事例をご紹介していきます。
目次
ルール性の高い「スポーツ」は AI との相性は最高
AI とは、Artificial Intelligenceの略で、日本語では人工知能と訳出されます。近年の情報技術の飛躍的な進展により出現した莫大な量の情報を適切に処理するために必須の技術となっています。また AI は性質上、何らかの形で学習データが適切に数値化される必要があるという点が特筆すべき点として挙げられます。
今回の記事の対象としているスポーツ分野は、特に AI のさらなる活躍が期待されている分野です。なぜならスポーツには厳格なルールがあり、求められる成果も全て数値化されているためです。
AI のモデルでは、目的変数と説明変数という二つの変数が設定されます。目的変数とは「求めたい結果」のことで、それを最適化するために説明変数(原因となる数字)を調整していくというのが AI モデルの実態です。この概念をサッカーを例に考えてみましょう。今回はサッカーにおける「ゴール」を目的変数(結果)として考えます。
この場合、説明変数(原因)としてはどのようなものが考えられるでしょうか。攻め手から考えればシュートを打つ瞬間の相手ゴールまでの距離や角度、守り手から考えればゴールキーパーの位置やディフェンダーの位置などが考えられるでしょう。
このようにたくさんの変数に基づいて、AI が自律的に学習を重ねていくことで、最適なゴール獲得のための条件付けを導出し、時には人間の発想からは生まれにくいような方法を掲示してくれるのが AI の面白さとなっています。
AI で進化するスポーツ体験
AI の特徴を簡単に振り返ったところで、ここからは本題の実際の活用事例を紹介していきます。観戦面、練習面、マネジメント面に分けて AI の活用事例をご紹介していきます。
観戦体験と AI
まずはスポーツの醍醐味である観戦面でいかに AI が活躍してくれているのかをご紹介します。
AI ELEVEN(サッカー)
AI ELEVEN はリアルタイム戦況予測 AI です。過去の莫大な量の試合データを学習データとすることで、リアルタイム映像から戦況を把握し勝敗を予測することで、視聴者のリアルタイムの観戦体験に深みを持たせることを可能としています。
参考: AI事例 :AI Eleven
Fastmotion V3(野球)
Fastmotion V3 は、野球のプレー映像を AI が分析し、各試合の名シーンにおける選手の凄さが最大限に伝わるよう、数値やアニメーションを試合動画に組み込んでくれるサービスとなっています。これまでは単なる試合シーンそのままの映像をみることが多かったため、素人に伝わりづらかった魅力を AI が引き出してくれる画期的なサービスとなっています。
参考: Fastmotion V3 放送局向け映像解析データ提供サービス
Hawk-Eye(ホークアイ:球技)
テニスやサッカーなどの試合で公平公正な判定を出すことができる電子審判システムです。コート脇に置かれた複数台の高速カメラがリアルタイムでボールを追い、そこから送られるデータを映像化して瞬時に判定をします。ライン際ギリギリに打たれたボールでさえもINかOUTかを瞬時に判別することができます。
参考: 電子審判システム
スポーツアナリティクス(バレーボール)
機械学習を用いてスポーツの戦況を示すデータから戦況の予測を行うシステムです。
例えば、バレーボールなら、相手チームのアタックがどこから飛んでくるか、セッターによるトスの位置などを予測します。
参考: 機械学習を用いた戦況予測システム
AI体操採点システム(体操競技)
体操競技における「技の完成度」を数値で表現するシステムです。
AIが体操選手の複雑な動きを瞬時に捉えてデータ化し、その情報をもとに客観的かつ正確な採点を行います。
参考: 体操競技の自動採点システム
ZUNOさん(野球)
データテクノロジーを利用したスポーツ解説システムです。
ディープラーニングの技術を応用し、2004年から記録されている300万球を超える打席データを学習することで、配球や勝敗、順位などを予測します。
参考: AI野球解説システム
Statcast(スタットキャスト:野球)
高精度カメラと軍事用のレーダーを用いた特殊装置によってボールや選手の動きを細かく分析します。
打者が放った打球の速度も計測可能で、解析されたデータは、実況中継放送中にでも画面上で表示ができます。
参考: メジャーリーグで導入しているデータ解析ツール
練習と AI
次に、実際にスポーツを行う人に役立つ、日々の練習を進化させるAIサービスのついてご紹介します。
GOLFAI(ゴルフ)
GOLFAI は、スマートフォンで撮影したスイング動画を AI がその場で診断してくれるサービスです。ポジションごとの姿勢やクラブヘッドの軌道を可視化することにより、スイングの基準線を動画内に自動記入し、ユーザーが改善すべき点を明らかにしてくれます。
参考: GOLFAIとは?
FURDI(ファディ―:エクササイズ)
AIトレーナーの指導とともにエクササイズできる、非接触型・女性専用AIフィットネスジムです。
ストレッチからダイエットまで対応できる200種類のトレーニングを搭載し、年齢や体力、目的にあったオリジナルのプログラムを組んでくれます。
参考: 女性専用AIパーソナルジム
AIスマートコーチ(学校スポーツ・アマチュアアスリート)
部活動などの学校スポーツやアマチュアアスリートに向けて開発されたスポーツのスキル向上をサポートするアプリです。
「動画で学ぶ」、「比較する」、「記録する」ことで、フォームのチェックや改善といったスポーツ技術の向上に役立てられます。
参考: トレーニングアプリ
スイマートラッキングシステム(水泳競技)
水泳競技において競技中のリアルな泳速データを、選手の動きとともに視覚的に提供するシステムです。
画像解析用のカメラで捉えた映像をパナソニック側のシステムで解析し、選手の位置を自動で捉えて移動距離の算出やリアルタイムの泳速を出します。
参考: 画像解析技術を用いた競泳選手のトラッキングシステム
マネジメントと AI
次はアスリートをマネジメントする立場にある保護者や監督などをサポートする AI 、スポーツ大会等運営側のサポートを行う AI をご紹介をします。
food coach(栄養管理)
food coach は、アスリートの栄養管理を行うことができる AI 搭載の食トレアプリです。約10万件の食事品目がデータとして蓄積されており、アスリートのレベルに合わせた食事のレコメンドが可能です。アスリートの競技特性に合わせた最適な食事メニューを作成可能で、完全に個別化した栄養管理を行うことができます。
参考: AI 搭載食トレアプリ food coach
バスケットボールの試合補佐(コーチング)
女子バスケチームのレッドウェーブは、コートに設置された複数のカメラで撮影された映像を AI で分析することにより、試合中のフォーメーションやシュートを認識し、選手一人一人の動きをデータとして学習することに成功しています。これにより各選手のパフォーマンスを客観的データに基づいて把握することが可能となり、監督の戦術策定に役立っています。
参考: 富士通、ITでバスケ強化 AI がコーチ補佐
ダイナミックプライシング(チケッティング)
ダイナミックプライシングは、価格変動性のチケット販売技術で、需要に合わせたチケット販売を実現しています。AI によってチケットの販売状況や対戦相手、天候状況など、様々な要素から最適なチケット価格を算出し、スタジアムの盛り上がりを最適化します。
参考: Jリーグでも!スポーツチケット販売で活躍するダイナミックプライシング
ONE TAP SPORTS(ワンタップスポーツ)
アスリート自身が入力した日々のコンディションデータなどをAIが分析し、データをもとにアスリートの疲労・熱ストレス・睡眠の質などを客観的、定量的な値で指標化します。指標化されたデータは、アスリート自身のセルフケア意識やパフォーマンスの向上、ケガの予防などに役立てられます。
参考: 選手のコンディション管理
SPO+Training(チームプレー向けトレーニング)
小学生・中学生・高校生のスポーツチームを対象とした、パーソナルトレーニングシステムです。選手個々の年齢・身長・体力測定結果に基づいた最適なトレーニングメニューが処方され、動画を見ながらトレーニングが行えます。選手の日頃のトレーニング状況や定期的な測定結果の一元管理もできます。
参考: スポーツチーム向けパーソナルトレーニング
AI とスポーツの未来
本記事では、観戦面や練習面、マネジメント面で活躍している AI の実際の活用事例を紹介してきました。今後センシング技術の発達などにより、AI に与えることのできるデータが多様化していくことにより、さらなる速度で AI がスポーツを進化させていってくれると思われます。
この記事を読んだ皆様も、自分の興味のあるスポーツに AI によるサポートを導入して、スポーツ体験をアップグレードさせてみてはいかがでしょうか。