VR(仮想現実)は医療トレーニングと治療を再構築する

イギリスのSF小説作家であるArthur C. Clarkeがかつて「非常に高度な技術は魔法と区別がつかない」と記したことは広く知られています。

一般消費者向けの仮想現実(VR)は、高い期待と誇大宣伝がいくぶん落ち着いたことで、現在は不遇をかこっていますが、VRが正しく機能すると魔法のように感じられます。

今週開催されたSingularity Universityの Exponential Medicine Summitにおいて、聴衆は複数の絡み合う医学的文脈の中での、魅力的なVRのアプリケーションについて学びました。

ここでは特に興味深い2つの例を見てみましょう。

VRによる外科手術トレーニング

Virtual MedicsとMedical Realitiesの共同創設者であるShafi Ahmed氏は、今年もExponential Medicineで発表を行いました。我々は昨年、熟練した外科医の世界的な人手不足を解決するためのアーメド氏の取り組みについて、以下のように執筆しました。

「Lancet Commission on Global Surgeryによると、開発途上国の基礎的な外科治療のニーズを満たすために、外科医の数を2030年までに倍増させる必要があるとのことです。アーメド博士は、仮想現実で数千人の外科医を同時に訓練できると想定しています」

その目的のために、アーメド氏は2014年にGoogle Glassを使用して100カ国、計14,000人の外科医に手術トレーニングセッションをストリーミングし、周囲を非常に驚かせました。

さらに2016年には、VRで患者から結腸腫瘍を取り除く癌手術を生中継し、その様子を360度ビデオで撮影することでトレーニングセッションをさらに高い次元に導きました。

アーメド氏の哲学は明確です。彼は「1対1を忘れてください。私の考えは1対多です。私は皆さんの多くと知識を共有したいと考えています」と述べています。この考えを成し遂げるために、彼の会社であるMedical Realitiesは、外科医のための世界初のインタラクティブVRトレーニングモジュールを構築しています。これらの成功の後、アーメド氏は、外科手術トレーニングに活用するための、他の低コストでハイテクなプラットフォームを探し始め、ソーシャルメディアにたどり着きました。

昨年、アーメド氏はSnapchat Glassを使用して、手術を10秒間のビデオクリップに記録し、Snapchatのストーリーにアップロードしました。 結果、ビデオクリップは200万回の視聴回数と10万回のYouTubeダウンロードという大成功を収めました。 アーメド氏は「ソーシャルメディアは信じられないほどのリーチを持ち、かつ無料です。そういう世界に私たちは生きています」と話しています。彼はまた、Twitter初となる手術のストリーミング配信を行いました。

現在、アーメド氏はVRによる遠隔協力の境界を広げるために、ThriveというVR企業と共同開発を行っています。このプラットフォームにより、医師は共有の仮想オフィスに遠隔からログインして患者の症例を議論することができます。彼は、4つの異なる場所から4人の医師が同時に仮想オフィスにログインし、リアルタイムで患者の症例を議論したことを例に挙げています。さらに仮想オフィス内では、医師は患者の医療ファイルにアクセスしてレビューすることさえできるのです。

治療のためのバーチャルリアリティ

Cedars-Sinaiの医療VRの先駆者であるBrennan Spiegel氏は、治療のために患者にVRを使用することの好影響を直接目にしました。 Cedars-Sinaiでは、シュピーゲル氏はスマートフォンアプリ、VR、ウェアラブルバイオセンサー、ソーシャルメディアなどのテクノロジーがどのように健康成果を向上させるかを研究するチームを率いています。

研究結果には非常に素晴らしいものもありました。

シュピーゲル氏は、昨年100日間も病院で過ごすことを強制されるほどにクローン病で苦しんでいた若者の例を語りました。シュピーゲル氏が考える最高の治癒環境は、若者のおばあちゃんのリビングルームです。 シュピーゲル氏のチームは、祖母のリビングルームに360度カメラを設置し、患者にVRヘッドセットを提供することで、バーチャルに彼をリビングに運ぶことに成功しました。この体験は若者が涙を浮かべるほどのもので、VRがいかにして病院での患者の治療環境をより快適にできるかの完璧な例となりました。

また、シュピーゲル氏のチームは、高血圧の男性を支援するためにVRを使用することでも成功を収めています。 VRプログラム内では、ユーザーはキッチンに移送され、どのタイプの食べ物にナトリウムが含まれているかを学ぶができます。 その後にVRプログラムは、彼を人間の体内に運び、目標とされたナトリウム摂取量の影響を見せることができるのです。
スピーゲル氏の夢は、適切な治療経験が適切な患者に割り当てられるVRによる薬学を実現することです。

仮想現実と拡張現実は、医療分野において、治療、訓練、および医師同士の協力に向けた革新的な方法を生み出しています。 これらは、医療分野に適用された場合のVRの潜在可能性を示す、ほんのわずかな例にすぎません。多くの点で、これはVRとARの技術が成熟した際に起こることの始まりに過ぎないのです。

技術は常に魔法のように見える必要はありません。しかし、苦しんでいる患者や訓練を受けたいと望んでいる医師にとって魔法のような効果を発揮するのであれば、それは医療分野にとって素晴らしいことです。

Image Credit: Anatomy Insider / Shutterstock.com
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This article originally appeared on Singularity Hub, a publication of Singularity University.

この記事はSingularity Hubに掲載された記事を翻訳したものです。