次世代の偉大なコンピュータ・インターフェースが新たに誕生 – 名前はまだ無い

少し以前、両親は子供が庭でスマートフォンを見つめていることに気づいたかもしれません。そこには何もないのに、子供はウロウロしています。両親には子供が何をしているのかが分かりません。その子供は、スマホの画面を通して、きれいに刈り込まれた薔薇の中にいる幻のモンスターを見ていました。
その子供は、一時大流行した「ポケモンGO」という拡張現実(AR)を利用したスマートフォンアプリをプレイしていたのです。しかし、大流行になったのが一時的なものだったからといって、その重要性を過小評価してはなりません。ポケモンGOがシンプルな魅力を持ち、それがSNSで拡散していったということは、AR市場が巨大なものになることを示唆しています。

「私がそれに刺激を受けた理由ですか?私はポケモンGOがARの頂点だとは思いません。それはWindows 3におけるソリティアのようなものです。ソリティアはその時点での人気アプリで、素晴らしいマイルストーンです」とJohn Werner氏はボストンで行われた Singularity UniversityのExponential Manufacturing Summitで語りました。

以前、MIT Media LabのイノベーターであったWerner氏は現在、ヘッドマウント型ARディスプレイのメーカーであるAR研究企業Metaにおいて、戦略的パートナーのヴァイスプレジデントを務めています。

Werner氏は言います。当初より、私たちはさまざまな方法でコンピュータに携わってきました。それぞれのイテレーションで、前回の製品をさらに単純化して改善してきました。初めはパンチカードでした。 それがその後、キーボード、マウス、グラフィカルユーザーインターフェイスとなりました。 最近では、モバイルテクノロジーがタッチスクリーンをもたらしました。

次に来るものは何か?

拡張現実は、仮想現実と複合現実という関連した(時には混同される)分野を含む、新しい技術の波の一部です。そして、Googleやマイクロソフトの様な、業界の最大手企業が、十分な根拠を持って、前述の分野のすべてに参入しようとしています。 Werner氏に言わせると、これは次世代の偉大なコンピュータ・インターフェイスの誕生です。しかし、実際には、それには名前がまだありません。

「様々な時代の波に乗った企業を観察すると、彼らの多くがVR、AR、MRへ参入していることが分かるでしょう」とWerner氏は言います。 「彼らは単なるプレースホルダーだと私は考えています。この技術との関わり方の次の波を何と呼ぶべきか、私たちは、まだ分かっていません。」

拡張現実はすべてが真新しいものというでもありません、とWerner氏は指摘します。過去を振り返ると 私たちは、現実世界にデジタル情報を重ねてきました。 パイロット達はARを使ってデジタルゲージの経過を観察していますし、NFL放送ではフィールド上にデジタルの黄色い線が表示され、ファーストダウンをするために、チームが攻撃の際にどれだけ遠くに行かなければならないかを示してくれます。

しかし、彼のビジョンは、ポケモンGOとアメフトの黄色の線をはるかに超えています。

基盤技術の集約と、コストの急激な低下が同時に起こったことで、ARはより使いやすく快適なものとなり、主要分野での使用により適したものとなりました。 最も重要なのは、ARは現在2Dスクリーンに限定されていますが、ウェアラブルで、より没入できるものになりつつあるということです。

Werner氏は、時が熟すれば、ARとVRが融合して、コンピュータの使用方法を変えことになると考えています。

「人々はARとVRを2つの別個のものと見なしています」とWerner氏は語りました。 「しかし結局、それは一つのものになるでしょう。 そして、VRはこの細長いガラス1つで機能するようになり、それを使って何かにダイブする(完全に引き込まれる)ことも、戻ってくることも可能になるでしょう。

彼の会社のMeta 2は、この未来的なビジョンの初期の実例です。

Werner氏はこのデバイスを、完全に入り込むことが出来る90度の視界を持つ軽量ARヘッドセットと説明しました。 彼らは「学習曲線のない(誰でもすぐに使いこなせる)」オペレーティングシステム」を作るために努力しています。Dell、Nike、UltraHapticsとの新たなパートナーシップが注目を集めており、製品設計における応用などが見込まれています。

制作過程にあるヘッドマウント型の拡張現実デバイスはMeta 2だけではありません。また、MicrosoftのHoloLensも3,000ドルで開発キットとして販売されています。大げさな宣伝が行われた謎多きMagic Leapは、約14億ドルを集めました。そのデバイスについて知られていることの大部分は、インサイダー的な噂によるものであり、公表される時期についての確定的なデータは存在しません。

しかし、初歩的な拡張現実への一歩であるGoogle Glassが私達に何かを教えてくれるとすれば、それは、私たちは、実際に製品の準備ができる前に、はるか未来の新しいインターフェース技術を夢見て、それに簡単に熱狂してしまうということです。これは、テクノロジーにおける標準的なハイプサイクルの流れです。

例えば、バーチャルリアリティは、拡張現実よりもさらに進んでいます。手頃な価格の消費者用VRデバイスが市場に出回っています。しかし、VRに対する熱は冷めてしまっています。VRは成熟し、市場において現実的な魅力を獲得したため、次の段階はより実用的なものとなるでしょう。

このサイクルは、ヘッドマウントタイプの拡張現実にも適用されます。ARの場合は、まだ早すぎるのです。

われわれがこれまで見てきたウェアラブルARデバイスは不格好で、今日のコンピュータ・インターフェースをすぐに一掃する可能性は低いでしょう。しかし、数十年前に最初期のデバイスが開発されてから、劇的な進歩が遂げられています。Werner氏は、ダモクレスの剣と呼ばれる最初のVRデバイスが、とても重くて、そんなことがあってはならないのですが、万が一固定された位置から外れてしまったらユーザーを殺しかねないほどであったことを指摘します。

今は、ARデバイスは軽くて、頭を痛めずに着用することができます。そして現在、今後数年の間に開発を加速するとWerner氏が考える、集約的な動きがいくつかあります。 これには、高度な音声認識(Amazon EchoやGoogle Now)、3次元空間のリアルタイムモデリング(Google Tango)、接続速度の高速化(5G)、レーザベースのディスプレイ(ピクセルベースの画面ではなく) 、そしてAIが含まれています。

Werner氏の考えるARに最終的な姿は、現実世界での交流により近い体験で、私たちがコンピュータに適応するのではなく、コンピュータが私たちに適応するような体験です。

私たちのキーボードの配置方法は、数世紀前の技術である可動式タイピングに由来しているのだと彼は言いました。しかし、私たちは現在もそのようにして文字を入力し、ツイートをしています。

さて、私達はこれを何と呼びましょう?

ARとVRをどのように融合させるのかを考えているのはWerner氏だけはありません。Googleは、先週のGoogle I/O年次開発者会議で両方のテクノロジーをテーマとして扱いました。

会議前のブログ記事で、Google VRの責任者であるClay Bavor氏は、ARとVRがいかに関連しているかを検討しました。彼は、ARとVRは実世界とデジタル世界の間のスペクトル上の点であると提唱しました。一方で、それはすべて本物であり、他方ではすべて仮想であるとし、それと同時にその中間でもあり、現実と仮想のどちらとも言えるというのです。

彼は、実体的コンピューティング、身体的コンピューティング、知覚コンピューティング、複合現実感、没入型現実感などのいくつかの名称を提案した後、没入型コンピューティングという名前を選びました。もちろん、Googleが没入型コンピューティングと呼んでいるからといって、その名前が定着するとは限りません。ひょっとすると他の名称を順番に使っていくかもしれませんし、既に存在する名称の意味合いを拡大、カテゴリー全体を包括することになるのかもしれません。

Bavor氏によれば、確実に言えることは、コンピュータ・インターフェースはその歴史を通じて、「抽象化」のレイヤーを排除することで、より直感的なものに進化してきたということです。その結果、コンピュータ・インターフェースは、様々な仕事をしている多種多様な人にとってアクセスしやすいものとなってきました。ARとVRはデジタル世界を、私たちがそこで生活するように進化を遂げてきた世界(つまり現実世界)とさらに似たものに変えていくでしょう。どのくらいかかるのかは、はっきりしていませんが、そのトレンドがあることは明白です。

「没入型コンピューティングによって、携帯電話を絶えずチェックしたり、画面を見る必要が無くなり、私達は顔をあげて周りを取り巻く現実世界と仮想世界に向き合うことになります。コンピューティングは周りの環境にシームレスに組み込まれているため、人々は状況にあった情報にアクセスができるようになるでしょう。 それはコンピューティングインターフェイスの歴史における、不可避の次なる一歩なのです。」

 

Image Credit: Dell/YouTube
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This article originally appeared on Singularity Hub, a publication of Singularity University.

この記事はSingularity Hubに掲載された記事を翻訳したものです。