企業はどのように感情検知技術を活用しているか

あなたは自分の感情に向き合っていますか?

あなたのお気に入りの企業はじきにそうするかもしれません。それはすべて、2023年までに650億ドルにまで成長することが予想される市場である感情検知・認識技術のおかげです。

この急成長中の市場は、人工知能の発展と、消費者行動を研究したいと考える(様々な産業の)企業からの大規模投資によって支えられています。その技術では、微妙な表情やボディランゲージなどを含む、表情の特徴を分析して、内的な感情を認識します。

理論的には、この情報を用いることで、判断決定を促したり、そこに影響を与えることが可能です。もしくは単に、より感情的な、もしくはよりパーソナライズされた体験を作り出すことができます。

では、企業は何をどのような理由で行っているのでしょうか?そしてプライバシーに対する懸念はどうなるのでしょうか?検討してみましょう。

ディズニーと市場調査

映画産業の市場調査はふつう定性的なものです。調査、レビュー、スクリーニング後の反応から得られたデータは手動で照合されます。

しかし、ディズニーはテクノロジーを利用して、観客が映画をどれほど楽しんでいるかを判断しており、特にAIを活用した、複雑な表情を認識してその後の感情の予測までも可能なアルゴリズムを開発しています。

‘Factorised variational auto encoders’(FVAE)と呼ばれる方法論を使用するソフトウェアは、『ジャングルブック』や『スターウォーズ:フォースの覚醒』などの上映中に、赤外線カメラを使って観客の顔をキャプチャーしました。

表情の動きをトラッキングした数分後に、アルゴリズムは観客が(映画内の特定の画面に関連して)いつ笑っていつ泣くのかを予測できるまでに発展していました。

その技術が素晴らしいのは、その機能だけが理由ではありません。その活用の規模も素晴らしいものです。報告によれば、その検証では3179人の視聴者についての1600万個のデータポイントが生成されました。これは人間の知能の処理能力をはるかに超えたものです。

理論上は、この技術によって観客の反応のより正確な全体像を得ることができます。標準的な調査とレビューは、状況によって影響を受けます。例えば、人々は過度に批判的になるのを避けたり、その特定の瞬間に実際にどのように感じていたかを忘れてしまったりします。

対照的に、AIを活用した技術はリアルタイムの信頼できるデータを生み出し、何が(意図した)感情を引き起こすのかについてのより大きなヒントをディズニーに与えてくれます。

ケロッグとデジタル広告

ディズニーが感情検知技術を使って完成したプロジェクトについての意見を集めているのに対して、同じ技術を使って直接、広告やデジタルマーケティングの分野に情報を提供している企業もあります。

Affectivaはその分野における最大手の技術開発企業の一つで、その感情AIは様々なフォーチュン500の企業に使われています。

ケロッグはそうした有名企業の一例です。同社はAffectivaのソフトウェアを使って、自社のシリアルの広告に対する視聴者の反応を検証しました。

その実験では消費者に数バージョンの広告を見せ、最終的に、あるバージョンの広告は最初に視聴した際には最も多くの笑いを誘ったものの、二度目に見たときには視聴者はほとんど関心を示さなかったという結論を出しました。

結果として、ケロッグは、複数の視聴を通じて安定して関心を引いたバージョンを選びました。

この種のデータ主導のマーケティングはケロッグのような企業にとっては貴重なものです。しかし、そこにはプライバシーの問題が関わってきます。プライバシーの侵害だけが問題なのではなく、データの質が感情に関わるものなので、それを使って企業が消費者を操作したり搾取を行える可能性があることもまた重大な問題です。

当然ながら、Affectivaのような企業は慎重な対応を取っており、同社が個人情報を同意においてのみ使用し、データはいつでも要求に応じて削除するということを強調しています。

ユニリーバと応募者面接

企業は感情検知技術を消費者向けの目的にだけ使っているわけではありません。それを社内で、特に新規の雇用を行う際に使用している企業も存在します。

ユニリーバはその一例です。同社はHireVueのAI技術を使って、ボディランゲージや機嫌などの要素を基に、有望な候補者をスクリーニングしています。そうすることで、ユニリーバは、性格や特性が仕事にもっとも適している人材を見つけ出すこともできます。

ボディランゲージと表情を分析することで、アルゴリズムはある状況においてその候補者がどのように反応し行動するかを予測することができます。さらに、複数の反応の間にどのように感情が変化するかを根拠として、彼らの一般的な自信のレベルに加えて、候補者が嘘をついているかを検知することもできます。

そうすることで、ユニリーバは仕事に必要な特性を持つ人材を容易に判断することが可能で、結果として長々しい採用のプロセスを排除することにも成功しました。

Nevermindと変化するゲームプレイ

ビデオゲームはプレイヤーの中に一連の感情を引き起こすように設計されており、そうした反応はしばしば、そのゲームの全体的な楽しみに固有のものです。しかし以前は、クリエイターは個々の趣味、嗜好、独自の反応に関係なく、すべてのプレイヤーに向けた包括的な体験を作らなければなりませんでした。

現在では、認識技術のおかげで、ゲーム開発者は感情検知システムをユーザーエクスペリエンスに組み込み、リアルタイムでストーリーの流れに調整や変更を加えようとしています。

ホラーゲームのNevermindはその一例です。Nevermindではウェブカメラを使ってプレイヤーの表情をモニターします。その情報を根拠に、ゲームプレイの内容を変更し、おそらくは恐怖や不安の程度を基に、難易度を上げ下げしています。

よりパーソナライズされた体験を作り上げることに加えて、この種の技術にはさらなるメリットがあります。ゲーム内と現実世界の両方で、プレイヤーに感情コントロールの方法を教えることができるのです。

例えば、ゲームが簡単になればプレイヤーは穏やかになります。彼らはそのことを時間をかけて学習し、自分のストレスレベルを管理するようになるでしょう(そして今度はゲームがそれを管理します)。この能力はフラストレーションを感じる原因を取り除き、セッションタイムを増加させて、より没入的な体験を作り上げる手助けをしてくれます。

ゲームクリエイターのエリン・レイノルド氏はThe Weekに対して、Nevermindはプレイヤーを満足させることを目的として(さらなるターゲティングのためではありません)、ユーザーエクスペリエンスを向上させるためだけにデータを活用しているため、この分野ではプライバシーの懸念も少ないと語りました。

その将来像とは?

この技術によって可能になった機会は、デジタル広告と市場調査の分野だけにとどまりません。

同じ技術を利用している業界にはヘルスケアがあります。ヘルスケアの分野ではAIを活用した検知ソフトウェアが、将来的に、患者がいつ投薬を必要とするかを判断したり、医者がどの患者を優先的に見るべきかを判断する手助けをすることが見込まれています。

自動車業界もこの技術の採用が見込まれています。車内に感情検知ソフトウェアを導入することで、自動車の安全性が改善する一方で、全体のユーザーエクスペリエンスも向上します。この自動車分野の例は特に興味深い領域で、Affectivaはすでに調査と検証において大きな進歩を遂げています。

疲労したドライバーの検知から眠気のモニターまで、この種のデータは企業と消費者の両方にとって非常に貴重なものです。そのため、それが自動車に組み込まれるのは時間の問題でしょう。

この記事は、Econsultancy に掲載された「How brands are using emotion detection technology」を翻訳したものです。