AIがどのようにヘルスケアを変えているのか

AI(人工知能)は私達の日常生活の一部となってきていると言っても過言ではありません。
一般的な人は、アルゴリズムに音楽を勧められることや、AからBまでの道案内をしてもらうことについて深く考えはしません。

しかし健康に関するアドバイス、もしくは治療においてはどうでしょうか?

AIとロボット工学は、製薬業界や医療業界に大きなチャンスをもたらします。 マッキンゼーによると、大規模なデータ戦略を行うことで、AIの支援によって試験、研究、臨床行為が効率化されるため、米国の医療システムにかかる費用を、年間で最大1,000億ドルまで節約することができるとのことです。
それでは、AIはどのように利用されるのでしょうか?また、それは一般の人々に受け入れられていくのでしょうか?この記事では、これまでの状況を紹介していきます。

医療行為の合理化

複数の画像から情報を抽出するプロセスを指す画像分類は、これまで医療におけるAIとディープラーニングの主な使用用途の1つとなってきました。こうした技術の活用によって医師が不要になるわけではありませんが、医師の仕事を迅速かつ容易にします(そして人的ミスを減らします)。
例えば、画像分類は、放射線科医が優先度の低いX線を記録して書類整理するのを助け、長時間にわたる書類作成に費やす時間を削減します。

この技術は診断の支援も行うことができます。今年の初め、BBCは、オックスフォード病院の研究者が心臓病や肺がんのスキャンを診断できるAIを、いかにして開発したかを報道しました。 5人に1人の心臓専門医は、現在、心拍のタイミングによって検出される問題を見逃していると言われています。 AIシステムは、医師が見逃しがちな細部を拾い上げることができ、患者のリスクレベルに応じた治療を推奨することができます。

米国では、AIは、主治医が患者のために専門医を探し出し、紹介する手助けをしてくれます。このプロセスは、AIがなければあまりに時間がかかりすぎて複雑なため、ようやく取った予約日に患者が姿を現さないこともあります。
Human Dx(ヒューマン・ダイアグノシス・プロジェクト)のようなAIシステムでは、医師や患者のための迅速かつ正確で実行可能な治療方針を作成することができます。

予防ケアへのアクセス

病院や診療所でAIがどのように治療をサポートできるのかについて、一般の人はほとんど知らないままかもしれません。 しかし、一部の消費者がすでに所有しているデバイスを通じて、この技術はますます主流になりつつあります。

昨年の調査によると、Apple WatchやFitbitのようなウェアラブル製品は、高血圧や睡眠時無呼吸症のような深刻な状態を正確に検出することができるとされています。

チャットボットもまた予防的ケアで活用が期待される技術で、デジタルチャンネルを介してユーザーが助言を受けたり、さらには初期診断も行っている実用例がすでに数多くあります。 Your.MdとHealthTapは2大チャットボットであり、自然言語処理を使用して一般的な症状を理解し、ユーザーが身体のどこが優れないのかを突き止める手助けを行います。

大きな疑問は、ユーザー康状態についてロボットに話す気になるかどうかということです。
おそらくは、私たちはすでにインターネット上の情報に(どれほど疑わしいかは関係なく)頼りきりになっているため、実際にはこのような技術は非常によく受け入れられています。
Reformの報告によれば、英国の調査回答者の47%が、スマートフォン、タブレット、またはパーソナルコンピュータを介して「知的ヘルスケア」アシスタントを使用しても良いと回答しており、若い世代間ではその割合がさらに高くなっています。

健康とエクササイズに重点を置いたアプリが既に大人気となっており(そしてユーザーはそうしたブランドを強く信頼しているので)、おそらく、AIはすぐにHeadspaceやNike + Training Clubなどに統合されることになるでしょう。

メンタルヘルスと健康の支援

別の活用機会としては、人が面と向かって話しづらい分野が挙げられるかもしれません。その意味では、チャットボットとデジタルアシスタントは助けを求めている人々を発見するだけでなく、治療を受けやすくしてくれる可能性もあります。
Iesoは、精神的健康管理のための認知行動療法を提供するアプリで、開始以来1万7000人を支援したと言われています。その一方で、治療時間を50%も短縮したという証拠もあります。AIアシスタントがサービスの負担を大きく削減してくれるため、患者のみならず、NHS(イギリスの国営医療サービス事業)にも大きなメリットがあることは明らかです。

「あなたが不安を抱えていたり落ち込んでいる時、自分自身のネガティブな面を指摘する批判的な考えが浮かぶかもしれません。これには要注意です。それがあなたをどのような感情にさせ、あなたの行動にどのような影響を与えるか気づいてください。何か違う選択をすることもできるということを知っておきましょう。

最近では、うつ病や不安感に対処するためのアプリ「Woebot」がアプリストアで公開されました。 そのアイデアとは、特定の日時でしか受けられない専門的な治療とは異なり、昼夜を問わずいつでもサポートを受けられるというものです。

予防的ケアに加えて、AIは精神的健康状態の検出と診断にも役立ちます。 IBMの研究者は、機械学習が精神病を発症するリスクを予測できることを発見しました。 59人の発声パターンを分析することにより、89%の正確さで、すでに精神疾患を発症している患者に加え、その後精神疾患発症することになる患者を予測しました。

克服すべき障壁

AIが大きな影響を及ぼしていることは明らかですが、テクノロジーが人間の医療を利用する方法を真に変革する前に、克服すべき大きな障壁がまだあります。

一般的な健康をサポートするためのAIが受け入れられる割合は比較的高いかもしれませんが、深刻で敏感な健康問題になると、この割合は劇的に低くなります。Reformによれば、英国の調査回答者では、37%がAIを使用して心臓の状態を検査しても良いと答えた一方で、妊娠検査のためにAIを使用すると答えた回答者はたった3%にとどまりました。

UXもまた、慎重な検討が必要な分野です。医師と患者の両方にとって、テクノロジーは使いやすく直感的である必要があります。複雑なシステムを学ぶための時間や既存のスキルを持っていない多忙なスタッフの場合にはなおさらです。

最後に、テクノロジーが正確な結果を出すためには、質の高いデータへのアクセスが不可欠であるため、データは大きな問題であり続けるでしょう。突き詰めれば、医療専門家に適切なアクセス権を適切な形式で提供することに加え、自分のデータが使用されることを許可するだけの、公共の信頼が必要となります。

NHSが2020年までにペーパーレス化を実現すると約束したことにより、AIへの取り組みは、システムがより基本的なデジタル化に苦戦している間に、後回しにされてしまう可能性もあります。
しかし、忙しい作業の負担の軽減やプロセス合理化、アクセシビリティ向上などのメリットがあることから、民間製薬会社や新興企業ができるだけ早く投資したいと考える理由も明白です。

この記事は、Econsultancy に掲載された「How AI is transforming healthcare」を翻訳したものです。