マーケティングにおけるAIの真の影響力

この記事は、人工知能と機械学習がマーケティングの様々な局面に、どのような影響を与えるかを詳細に検討していきます。特に、マーケターがそうした新興技術を最大限に活用する方法について扱います。

SoftBankのAIロボットPepperは感情を読み取ったり、障害物を認識したり、情報を提示することができます。しかし、そうした技術が今後、人間のマーケティング能力と同等のレベルに達することはあるのでしょうか?

私たちのほとんどは下記のAI恐怖症レベルのいずれかに該当するでしょう。

AIとは何でしょうか?
1.AIは私の仕事や私生活にまったく脅威を及ぼさない。
2.私はAIについて漠然とした不安を持っている。
3.私はAIが私の仕事を奪うのではないかと心配している。
4.私はAIがサイバーアタック、スパイ活動、データ収集に悪用されると心配している。
5.私は上記の二つの点について、非常に心配している。

100年近くの間、SF作家たちは、1927年のハリウッド映画『メトロポリス』からアイザック・アシモフの作品、さらにはフィリップ・K・ディックの『電気羊はアンドロイドの夢を見るか?(ブレードランナーの原作として有名)』にいたるまで、様々なシナリオを描くことで、私たちに最悪の事態への準備をさせてきました。私たちはすでに、騙され(『エイリアン』)、奴隷にされ(『マトリックス』)、殺され(『ウエストワールド』)、さらには人類全体が絶滅させられる(『ターミネーター』)想定が出来ています。

それとは対照的に、AIを描いた新しい物語は非常に肯定的で、AIはヘルスケア、法律、気候変化などの多様な分野で人類に貢献すると私たちに伝えています。マーケティング担当者は二つの主な意見について考える必要があります。つまり、AIはマーケティングをよりクリエイティブで効果的なものにするという主張と、AIは私たちの仕事上の役割の多くを必ずしも必要のない余計なものにするという主張です。

この記事では恐怖症レベル4の、AIが自分の仕事にどのような影響を与えるか心配しているマーケティング担当者に向けて書かれています。今も続いている憶測や議論を考えれば、マーケティングにおいてAIが果たすことのできる役割を特定し、AIは救世主なのか脅威なのかを今判断する必要があるでしょう。

AI:現在と今後

現在、AIについての主な意見や考えには次のようなものがあります。
・人々は広告を嫌っており、ブランドとの間のより有意義でパーソナライズされたコミュニケーションを望んでいる。
・よりパーソナライズされたカスタマー・エクスペリエンスを提供するために、企業はすでに競ってAIを活用している。
・「今から五年後には、AIを活用していないマーケティングはマーケティングとすら呼べなくなる」(Cognizant社、マルコム・フランク氏)
・AIは予測分析によって、行動計画をサポートしてくれる。
・AIはコンバージョン率の最適化(CRO)を支援してくれる。
・マーケターは重要業績評価指標(KPI)に影響を与えるようなAIの活用方法をまだ知らない。
・マーケティング担当者の多数は、AIの影響で失業することを懸念している。

これらはすべて、思考をめぐらすには素晴らしいスタート地点です。しかし、日常的なレベルでAIが私たちの仕事に影響を与えるかについては、あまり多くを教えてはくれません。AIが人間の様々な役割を奪うという懸念が業界に広がっているにも関わらず、それを支持する詳しい証拠が見つかることは稀です。

ジャーナリズムをバックグラウンドとするコンテンツメーカーとして発言すれば、これまで私が目にしてきたもので、自分の仕事を奪うと感じたものは一つもありません。
では、事実の確認をしていきましょう。

AIの得意分野とは?

スピード
AIは計算や、さらにはクリエイティブなタスクにかかる時間を削減するのが得意です。時間が削減できるということは、コストや諸経費も減り、余裕が増えるということになります、ワシントンポスト紙はすでに850もの新しい記事を自動化して公開しており、ロイターは、データを分析し、話のアイディアを提案し、さらにはいくつかの文を自動生成することによって、ジャーナリストを「支援する」ツールを開発していると、最近発表しました。
現在のところ、その目的はジャーナリストに取って代わることではなく、彼らを支援することです。

ボリューム
スピードに関係するのがボリュームの観点です。計算のスピードのおかげで、AIは人間よりもはるかに素早く、膨大なデータを分析することが可能です。さらにAIは、簡単なテキストから動画、ARやVRにいたるまで、膨大な量のコンテンツを創りだすことができます。

正確性
AIによるアウトプットは、一人の人間が処理できるよりもはるかに多くのデータを、人間よりも多様な方法で使用することで実行されているため、その計算や提案はより正確なものになるでしょう。
その点で、AIがマーケターのツールキットに加えてくれる機能としては次のようなものがあります。
・言語/スピーチ認識性能の向上
・広告のターゲット設定の改善
・予測に基づく顧客サービス
・ウェブサイトデザインの提案
・コンテンツの提案とキュレーション
こうした機能が加わったことで、デジタル分野やウェブデザイン、そしてCROを職業としている人々は影響を受けることになるでしょう。しかし、マーケティングのスピードアップや正確性向上から、実際に人間の仕事を奪うまでの飛躍が遂げられるかはまだ分かりません。

AIの抱える課題

作家として、私はアメリカのニュース関連の大手企業の一つが、数年前にソフトウェアを使って金融レポートを記事にしたという話を知って興味をひかれました(恐怖を感じました)。彼らは、その記事がAIの作ったものだとは発表せず、その結果、誰も人間が書いた記事との違いに気がつきませんでした。その後、私はArticooloの話を聞きました。Articooloとは、入力した一つのキーワードを基に記事を書くウェブアプリです。私はすぐにそれを試してみて、コンテンツが決まり文句にあふれていて、リズムや声のトーンの感覚にかけていることが分かりました。

それは私が期待していたようなものではありませんでした。
現在役に立たないものが、明日世界を席巻するほど素晴らしいものへと変わる可能性がある、ということを認識することは大切です。しかし、作家として、私はとりあえずのところは安心しました。
作家の仕事がすぐには脅かされないというさらなる証拠が、SFの脚本を書くAIの中に見つかりました。そのAIの書く物語は面白く、感動的なものでさえありますが、完全にナンセンスなものです。
ロイターやワシントンポストのロボ記者の件を踏まえて、なぜAIにはこなせる仕事とこなせない仕事があるのかを考えるのは興味深いことです。一つは以前の形式を模倣することで成功が得られる「分析」であるのに対して、もう一方はオリジナルのアイディアが求められる「クリエイティブな作業」だったからなのでしょうか?

マーケティングにおいてAIを最大限活用する方法

考えるべき重要なこととは、多くのマーケターがAIを最大限に活用する方法を知らないということです。それは鶏と卵の話のようです。使ってみるまでは、AIが必要だとは感じません。しかし必要性がなければ、決してAIを使うこともありません。私はマーケターとしてAIを最大限に活用する方法を知りませんが、AIには何ができるのか、とよく考えています。その答えはたいてい、「AIにやってもらいたいことなら何でも」となり、会話は無駄に終わります。

次のことがキーとなります。マーケターは、可能であればAIを使って得たいもの、実現させたいものを口に出す必要があります。必要性は発明の母なのです。あなたは何が必要なのですか?

AIはどの分野でマーケターを支援できるか?

ブランディング
非常に高度なAIは製品を観察し、市場データや消費者の情報を分析して、色や写真を含む、ブランドの名前、スローガン、ガイドラインを提示することができるかもしれません。しかし、これは遠い未来の話です。

評価
それぞれの指標は全体を明らかにしないにも関わらず、ほとんどのマーケターは一つないしは複数のKPIを採用せざるを得ません。すべてのUPVが同じ価値を持つわけではない状態で、どのようにマーケティングのパフォーマンスの有意味な全体像を描く出すことができるのでしょうか?滞在時間や直帰率を着目していると、クライアントはしばしば「そうですか。しかし、それが何を意味するのでしょうか?」と質問します。平均化を行うことで、あらゆるパターンが隠されてしまいます。

AIを使うことで、膨大なデータを処理し、有意義な評価を行うことが可能になります。

アトリビューション
コンテンツマーケターは特に、統一基準としての投資収益率(ROI)が私たちにとってのクリプトナイトのようなものである、とは認めたがらないでしょう。インターネットには多くの「コンテンツマーケティングの評価方法」といった記事があり、それらの内容がすべて異なっているという事実を考えれば、誰もマーケティング責任者や彼らの上司が満足するほどまでにはそれを理解していないことが分かります。

A/Bテストおよび最適化
もしAIを使ってウェブサイトのコンテンツについてA/Bテストを行い、特定のKPIに応じてコンテンツを最適化することができるとすれば、素晴らしいとは思いませんか?AIはあらゆる相互関係を分析し、読みやすさからフォーマットまでを改善し、追加でリンクを行い、デザインもしてくれます。さらにはセクションも増やしてくれます。

パーソナライゼーション
これはすでに指摘されていることですが、大規模でのパーソナライゼーションは不可能です。もし可能であるとすれば、あなたの顧客が少ないということです。あなたが何者で、あらゆるチャンネルといつ通信しているかをAIが知り、あなたの体験をパーソナライズすることができれば、それは有益なものでしょう。

この機能は上記の要素と連携し、毎秒ごとに無限の複雑なデータを処理することで、パーソナライズされた体験をそれぞれの個人に向けて常に最適化します。

ターゲット設定
有料デジタルメディアのマネージャーは多くの時間を、支出から最大限の結果を得るために、変数の抽出や入力、微調整のために費やします。この作業はすべて自動化が可能です。AIは膨大なデータを分析し、特定の顧客をターゲットに設定することが可能です。この仕組みは広告チャンネル(FacebookやGDN)が提供するものよりも、より洗練されたものです。例えば、Twitterの広範囲な世界の中から、特定の方法で抽出したグループや小集団にアクセスしたい場合です。

また、AIはPRとインフルエンサーの影響範囲のリストを即座に作成してくれるでしょう。

主観とクライアントのフィードバックの排除
マーケティングの成功の度合いは、しばしば非専門家の主観的な意見によって縮小します。作家やデザイナーでない100人のステークホルダー全員が、デザインやコピーに対して意見を述べることで、あなたの創造性は集団によって殺されてしまいます。クリエイティブな人々でさえ、データの力を利用して、自分たちのアプローチが正しいものであると証明することができます。

しかし、信頼のできるデータが入手できず、クライアントと無駄な議論をしなければならない場面がいまだに存在します。写真の選択、声のトーン、何を含めるか、何を選択するか、デザインの要素などについてです。実際のところ、AIによってクライアントのフィードバックはなくなるのでしょうか?

コンテンツ
ひょっとしたら現実から逃げているのかもしれませんが、私は、AIは人間の作家の持つ広大な文章ツールキットによって書かれたコンテンツを作り上げるというレベルには遠く及ばないように感じます。ユーモア、メタファー、皮肉の微妙な感覚、そして想像力には、AIはいつまでも追いつけないのかもしれません。ただしその点はあまり重要ではありません。というのも、前述のメディアはすでにAIを活用してニュース記事を書いていますが、現在のところ、その用途は金融の予測やスポーツの結果といった統計が重要なコンテンツに限られているからです。

AIが役立つ分野というのは書類の作成でしょう。つまり、データを徹底的に調査してギャップと機会を発見する作業、一般的なメタディスクリプション、H1 tags、URLやキーワードに加えて、記事がカバーする必要のある内容の全体像を描くといった用途です。CognitiveSEO、SEMrush、Ahrefsなどのツールは、私たちがその実現に近づいていることを示しています。私たちに必要なのは「記事作成」ボタンだけです。消費者は感情的なので、重要なことは、AIが感情の原因とそのコントロール方法を理解することです。そして、私たちはその実現に近づきつつあります。

SEO
SEOのチームは、Google Analyticsから今述べたばかりの競合他社にいたるまで、膨大な量のデータにアクセスすることができます。それぞれを無限に近い方法で比較し、解釈することが可能なため、時間が必要となります。また、目的と戦略はアウトプットを向上させるためには重要な要因です。

AIは客観的にものを捉え、データの宇宙を分析し、それを解釈して最高かつもっとも容易な機会を見つけ出して、それを最大化するための一部の隙も無いソリューション、つまりコンテンツ、リンク、キーワード、対象となる顧客を提示することができるでしょう。

動画
説明動画の作成に数千ドルも支払わなくて済むことを想像してください。あなたはただ、指示付きのスクリプトをアップロードするだけで良いのです。フェードインして、上に動いて、などと書くだけです。そうすればすぐに、自動的にアニメの動画が出来上がります。微調整は必要なものの、大きな時間の節約になるでしょう。

ソーシャルメディア
AIはすでにソーシャルメディアのシステムに組み込まれています。あなたが夢中になっているものを表示する比較的安全なアルゴリズムから、ボットや偽のアカウントまで、その用途は多岐にわたります。成功をおさめているインフルエンサーの行動をまねさせて、即座にインフルエンサーへとなることができるプロフィールを作成する機能はマーケターの夢です。

もしユーザーエクスペリエンスが気に入られれば、ユーザーは実際の人間よりもそれを好むようになるでしょう。チャットボットの成功は、そのことが正しいことを示していると言えます。

プロジェクトマネジメント
すでに世の中には素晴らしいプロジェクトマネジメント・ツールが数多く存在します。しかし、AIはプロジェクトマネージャーやアカウントマネージャーの役割を果たすことができるのでしょうか?AIはアカウントマネージャーと同程度に柔軟で、適応力のあり、交渉力のあるものとなるのでしょうか?もしくは、例えば、自動化されたアラート、ボット、広告等のような、私たちがコンピュータにすぎないと知っている他の物事を無視しているように、誰もがAIのアカウントマネージャーを単純に無視するのでしょうか?

ウェブサイトのデザインと構築
Wixのようなソフトウェアによって、テクノロジーに疎い人でもウェブサイト全体をデザインすることが可能になっています。しかし、私たちはすでに次の段階にいます。AIはウェブサイトをドローイングの段階から作り上げ、自分自身をデザインするウェブサイトをも創り出すことが可能です。

アイディエーション(アイディアの発想)
AIは素晴らしいマーケティングのコンセプトを考案することはできるのでしょうか?“Best marketing campaigns 2017”とGoogle検索をかけて(昨年度のものでも大丈夫です)、そうしたアイディアをAIが思いつくことができるかと自問してみてください。おそらく、ほとんどのキャンペーンにはデータ、それもおそらくは莫大なデータが情報として活用されていますが、それを実際のアイディアとしてまとめるには人間の介入が必要です。

AIがハイネケンの素晴らしいWorlds Apart広告を思いつくでしょうか?
もしくは、National Women’s Dayを祝うニューヨークのFearless Girl of State Streetを思いつくでしょうか?

価値、変革、「ノイズを超えて」

現在の車はみな、私には同じに映ります。科学によってどんな車が安全で燃費が良いか定義されているからです。そのため、ミニクーパーやFiat 500がもてはやされるのです。

超高性能アルゴリズムがあらゆるものを定義する世界では、私たちのマーケティングも同じようなものになるのでしょうか?二社の別々の自動車保険会社が、まったく同じキャンペーンを作ったり担保を設定してしまうことになるのでしょうか?

もしそうであるなら、そのことで人的な要素の必要性が高まるでしょう。創造性、一風変わった独創的な発想、ユーモア、愚かさ、天才のひらめきなどです。Articooloはすでにコンテンツ作成ツールを使ってこの問題に取り組んでおり、ユーザーに読みやすさとユニークさを提供しています。

紙のメディアは、ウェブ媒体が価値、斬新さ、イノベーションを提供してきたことで、今世紀に入って減少しました。印刷物を扱うマーケターがほとんどいなかったため、2010年までに、紙媒体は再び流行しました。それは再び真新しさを獲得し、過疎化した市場の名誉の証となったため、ロールスロイスやAirbnbなど多くのブランドが雑誌を再び利用し始めました。

ここまで紹介してきた項目によって、仕事のキャリアが長く続くことを再認識した方もいるかもしれません。また、これまで以上に「冗長」だと感じたかもしれません。しかし、マーケターがAIを最大限活用する有意義な方法は、AIに何ができるのかを問うだけでなく、私たちがAIにしてもらう必要のある業務をAIは行うことができるかを問うことなのです。

この記事は、Raconteur に掲載された「The true impact of AI on marketing」を翻訳したものです。