学校におけるAIの活用―その際に考慮すべきこと

学校でAIが活用されることへの準備はできていますか?

AIが将来的に病気の発症を予測できるようになる可能性が高いと研究者が考えていることはすでにご存じかもしれません。また、日々のオンライン検索の際にAIをすでに使っていること、Google翻訳や電話で音声コマンドを使っていることは自覚しているかもしれません。

みなさんは、カナダ政府が過去数年間で数百万ドルをAI研究に費やしてきたことや、同国がAI研究の世界的なリーダーとして台頭してきたことを聞いたことがあるかもしれません。

しかし、例えばAI個別指導システムなど、学校で使用するAIを開発している企業があることは知っていましたか?そうしたシステムは対話によって生徒と関り、生徒が追加の支援を必要とする科目に関するフィードバックを提供します。

教育テクノロジーの研究者として、私は教育者が技術的進歩をどのように取り入れるかという点に興味があります。私の関心は、教育哲学、心理学、社会学、テクノロジーを総合的に組み合わせることによって、教育を促進し、その質を改善することです。

両親、教育者、そして一般の人々はAIと、その教育分野への応用可能性を理解する必要があります。これは、私たちが情報を知ったうえで議論をするために重要なことです。

テクノロジーは学習に影響を与える

それぞれの新技術の登場によって、教育者は、そうした技術がどのように学習に影響を与えるかを観察する機会を得てきました。例えば、1930年代と40年代の研究者は、タイプライターが商業や経済の分野で幅広く使われていた時代に、授業中のタイプライターの使用が小学生の読書能力に与える影響を研究しました。

1959年にオタワのローレンシャン高校で行われたタイピングの授業(カナダ国立図書館・文書館)

とはいえ、多くの技術的イノベーションには懐疑的な意見が向けられてきました。特に、若者や子供に対する新技術の影響は、しばしば警戒を招く要因となってきました。

しかし、懐疑論や不安の中には、テクノロジーを避けられない進歩であると考える傾向が関係しているものもあります。そうした進歩は、プライバシーやメリットなどについての適切な問いをすることなく、素早く受け入れるべきだという考えです。

学校におけるテクノロジーについては、社会的、倫理的、そして経済的な疑問が存在します。例えば、学校は投資する技術をどのように決定するのか、という問題です。

現在、北アメリカとヨーロッパの教育技術の市場は、2014年の750億ドルから2019年には1200億ドルへと成長すると見込まれています。

AIなどの新技術に対する教育がより大きな社会経済的発展にどのようにフィットするか、そしてそれが若者や子供にどのように影響するかを、方針のレベルで考えることが必要不可欠です。

AIと「ディープラーニング」の登場

1980年代の半ばまでは、初のデジタル技術であるコンピュータが公立高校に一般的な方法で導入されることはありませんでした。インターネットを基礎とした技術やオンライン学習は、2000年代の中盤から後半にかけて、教育技術の研究者たちの関心事となりつつありました。というのも、コンピュータとインターネットが学校で普及し始めていたからです。

AIテクノロジーはインターネットを基礎としたデジタル技術の一形態ですが、さらに高度なものです。コンピュータサイエンティストのジョン・マッカーシー氏は、人間のように知的に思考するコンピュータシステム、ソフトウェア、プログラム、そしてロボットの実現を目指す科学と工学を指す言葉として、「AI(人工知能)」という造語を生み出しました。

AIを基礎としたシステムはまず最初に、人間のプログラマーが提供した最初のデータ、プログラム、アルゴリズムから知識を引き出します。その後に、彼らは具体的なプログラミングの必要なしに、自分の経験や観察を通じて「学習」します。

この後者の知識の入手方法は、1959年にアーサー・サミュエルによって機械学習(ML)と名付けられました。機械学習は様々なアルゴリズムで機能しますが、ディープラーニングというアルゴリズムが好まれており、それはノードとインターリンケージから構成される人工ニューラルネットワーク(ANN)を基礎として稼働します。

「ディープ」という言葉は、データが多くの計算のレイヤーを通過しなければならないことを意味しています。ディープラーニングを基礎とするマシンは、多くのデータを得るほど、そのパフォーマンスが向上します。

口頭でのコミュニケーションが可能なAmazonのAlexaやAppleのSiriといった今日しばしば活用されているバーチャルアシスタントは、ディープラーニングを使用しています。オンラインでの顧客からのリクエストに応えるチャットボットも同様の仕組みを採用しています。

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これが可能になるのは、AI技術が学習者やユーザーから提供される情報をプレインストール済みの膨大なデータセットと比較し、共通点やパターンを発見するようにプログラムされているためです。

教室向けのバーチャルアシスタントは大学レベルで使用されてきました。フォーブス・マガジンは、複数の企業が幼稚園前の子供から大学レベルの生徒を対象に、AIを活用した個別指導プラットフォームを開発していると報告しています。

個別指導向けのAIが可能になるのは、学習者やユーザーから提供される情報をプレインストール済みの膨大なデータセットと比較し、共通点やパターンを発見するようにプログラムされているためです。

学校におけるAI活用の別の例も紹介します。AIを使うことでボードゲームにおいて「よりスマートな」対戦相手を用意することができます。例えば、学校のチェスクラブはAIを学習ツールとして活用することが可能です。AIによるプログラムは数人の世界最高のボードゲームチャンピオンに勝ち、AI開発者たちを歓喜させました。

AIの抱える問題

AIは教師の代わりにはなれないと考える研究者も存在します。また、現状から提起される、教育・学習のコミュニケーションは今では教員という人間の媒体なしに成立するという、不明瞭な疑問に向き合う必要があると指摘するものもいます。

私たちが覚えておくべきは、AIによる個別指導などの技術は教員の代わりや、親の関りと監督の代わりになることはありません。

また、私たちは、学校で学ぶ子供や若者たちに向けて使用する場合の、あらゆる新技術の適切さを評価する基準を検討しなければなりません。インターネットを活用したプログラムやAIプログラムのいずれかを導入する前に、学生や教員のデータプライバシーとセキュリティメカニズムも考慮すべきでしょう。

AIを好むにせよ憎むにせよ、現実としてその進歩は続きます。その性質と将来性を認識することで、さらなる発展とユースケースが促されるでしょう。

この記事は、The Conversation に掲載された「AI in schools — here’s what we need to consider」を翻訳したものです。