ヒューマンリソースにおけるAI:時間を節約してより人間的に

人工知能をヒューマンリソース(HR)の分野で活用することで、業務のスピードが向上し、仕事の本当に人間的な業務を行うための時間を増やすことができます。

 

ロボットが数百万人の仕事を奪うという声が世界的に大きくなっていることを考えると、人工知能(AI)がヒューマンリソースの分野を劇的に変えつつある、という事実はいささか皮肉なものです。HRの分野は伝統的に、先進的なパイオニア的技術との関係性はありませんでしたが、AIを採用して開発を行わなければ、それは致命的な誤りとなるでしょう。

「AIや自動化はどのように現在の仕事を代行するかという議論に多くの時間が割かれている現状で、その技術が従業員の発見、確保、維持において大きな役割を果たすということは忘れられがちです」とイギリスのSalesforce社ヴァイスプレジデント兼ジェネラルマネージャー、アンドリュー・ローソン氏は指摘します。

「常に変化が起こり、デジタルスキルが不足する時代においては、適切な人材を発見することはかつてないほど困難になっています。AIと自動化を活用することで、企業は幅広い有能な候補者を迅速かつ容易に発見することができます。そのスピードは現在のビジネスの驚異的な速度に対応するほどです。」

 

 

AIは人材獲得をいかにして支援するか

このテーマに関連して、スタートアップ企業のインキュベーター、Founders Factory社の主任科学者Jeffery Ng氏は次のように述べました。「HR部門にとって、仕事の適切な候補者を発見することは、干し草の山から針を見つけるようなものです。ある研究によれば、リクルーターの業務時間のうち79%が無数の候補者をふるいにかける作業にあてられているといいます。」

「AI分野の発展は、リクルーターの抱える非効率性を軽減してくれます。最近まで、有望な候補者の長いリストを作成するには数週間から数か月かかっていました。それが今では数秒とはいかないまでも、数分で作成可能です。」

「AIは効率性の向上の他にも、多くの支援を行うことができます。自然言語分析と意味論的な理解の発展を、人材採用のプロセスに応用することが可能です。機械は候補者の履歴書を査定するといった作業にとどまらず、候補者のオンライン上での活動、その企業の文化や全体的な適合性をより正確に考慮します。」

そうした技術が仕事の現場を変革し続けているため、HR部門がAIとHRの持つ人間的な要素の両方を活用して、従業員の獲得と維持を行うことは必要不可欠です。

デロイトのHR改革の責任者であるリチャード・クームス氏は次のように言います。「AIはHR部門に多くの機能を提供してくれます。認知能力を判断するための動画インタビューのデコーティング、労働者のキャリアの選択肢を発見する、マネージャーを研修してリーダーシップスキルの改善を図るなどの機能です。さらにAIは、常時稼働している、パーソナライズされたコンシェルジュ型のサービスをHRチームの組織に提供してくれます。これはAIがなければ実現不可能なものです。」

現状のHR部門には技術的なスキルが不足している

しかし、一つの大きな固有の問題があると、リズ・セバーグ・モンテフィオーリ氏は指摘します。同氏はロンドンに本社を持ち、キャリアマネジメントおよび従業員エンゲージメントを扱う10Eighty社のディレクター兼共同設立者です。「問題は、多くのHR関係者は技術的なマインドを持ち合わせていないということです」と彼女は言います。「AIと自動化の予算を獲得することにHR部門が賛成できるかが大きな問題です。」

「もしデータを活用して潜在的な問題を特定して、それに対応する手助けをしたり、従業員が生産的になって仕事により深くかかわれるように、キャリアマネジメントを支援することができるとすれば、素晴らしいことです。しかし、データを理解できなければなりません。」

「HR部門は大量のデータを収集する傾向がありますが、それを使って大した業務をしているとは思えません。より技術的なマインドを持つHR従事者たちは、HRの機能と、学習および開発アプリケーションの両方にAIを応用しています。」

マイクロソフトUKの最高執行責任者であるクレア・バークレー氏は、データリテラシーを向上できないHR従事者は、才能ある人材を採用して組織の留めておくことが不可能なので、組織に間接的な損害を与えることになると警告します。「AIの採用は今やあらゆるビジネス戦略の成功に必要不可欠なもので、HRにおいては即座に価値を提供することが可能です」と彼女は言います。

「機械学習を活用して新しい人材をスクリーニングするにしても、データ分析を行ってより洞察に満ちた職場の取り組みを提供するにしても、AIによってHR関係者は手動による反復的なタスクから解放されて、本当に価値を生み出す仕事に向き合うことが可能になります。」

 

AIと人間の協働こそが成功へのカギ

AIによって人々がより人間的になれる一方で、テクノロジーを軽視することは、それに過度に依存することと同じくらい危険なことです。人間と機会の協力が勝利への方程式です。「機械学習、AI、そして自動化は、HR従事者のあらゆる日々の業務を補完して、HR部門のより人間的な業務である、従業員支援の質を改善してくれます」とローソン氏は言います。

「そうした技術が仕事の現場を変革し続けているため、HR部門がAIとHRの持つ人間的な要素の両方を活用して、従業員の獲得と維持を行うことは必要不可欠です。」

マイクロソフト UKによる最新の研究Maximising the AI Opportunity(AIの機会最大化)は、「驚くべきことに68%のHR従事者が、ルーティンワークを自動化することで、意義ある仕事のための時間を捻出することができると考えていることを示しました」とバークレー氏は指摘します。「これが示しているのは、AIはHR従事者が本当に大切なこと、つまり人間のために尽力するために、決定的に重要な役割を果たすということです。」

「人間の共感力や判断能力などの主要なソフトスキルを、AIの強力な分析・予測機能と組み合わせることは、HRにおける成功のレシピとなり、現在そして未来において、より洞察に満ちた人間中心の仕事を促進してくれるでしょう。」

 

 

HR独自の役割とは、様々な従業員の集団を管理する準備を人々にさせることである

そうした事実があるにも関わらず、イギリスのHR従事者のうち、自分の組織がAI戦略を採用していると考えている者はわずか8%にとどまりました。バークレー氏はこれを「懸念すべき統計結果」と呼び、「この結果はAIのメリットを認識しているHR従事者と、実際にその考えを行動に移している人の数の明らかなギャップを示しています」と言います。

「将来の従業員の雇用とその維持を担当し、そして新しい取り組みの価値を伝える立場であれば、確実に成功をおさめるためには、HRの主導者たちがAI導入に向けたあらゆる段階で、自身の組織と足並みをそろえて活動することが極めて重要です。」

さらに、クームス氏は、HR部門はロボットと協働できるように人間を研修する際に、必要不可欠な役割を果たすと考えています。「デロイトのTech Trends 2018調査に協力した人のうち、人間、ロボット、AIが共同で活動するワークフォースを管理する準備ができていると回答した人はわずか17%でした」と彼は言います。

「この事実は、HR部門が、組織を未来的な職場へと変革させる際に、唯一無二の重要な役割を果たさなければならないことを示しています。その中には、従業員がその役割に関係なく、常に効率的およびクリエイティブに会社に貢献することを支援するための研修を提供したり、学習を行うための革新的な方法を開発することが含まれます。HRにおける専門知識や経験は、技術を効果的にロールアウトするために非常に重要です。」

バークレー氏はスピードの必要性を強調します。「前例のない変化の時代においては、HR従事者はAIがどのように機能するかを傍観することはできません」と彼女は結論付けます。「HR関係者は、組織内の他のビジネスリーダーたちと協働して、積極的に変化へのロードマップを作り上げなければなりません。そのロードマップは、人間と機械の機能を融合することの倫理的な影響を強調するだけでなく、従業員が最高の待遇を得られるように、ツールと研修を必ず提供しなければなりません。明日の成功を手にするためには、今日行動を起こさなければならないのです。」

この記事は、Raconteur に掲載された「AI in HR: freeing up time to be more human」を翻訳したものです。