AIがショッピングエクスペリエンスに導入されれば、AIはあなたが何を買うか、さらには何を買うべきかを把握してくれる。

オンラインショッピングにしても実店舗での買い物にしても、小売業界は人工知能と機械学習による革命の最新の戦場となっています。

オーストラリア大手の小売業者数社が、AI戦略を採用することで多くのメリットが得られることに気がつき、ある企業では、データサイエンティストのチームによって支えられるAIおよび機械学習部門のチーフを募集しています。

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新しく作られたWoolworthsの一部門であるWooliesXは、様々なチームから成る集団をまとめ上げることを目的としています。そこには、テクノロジー、カスタマーデジタルエクスペリエンス、eコマース、金融サービス、そしてデジタルカスタマーエクスペリエンスなどのチームが参加しています。

データ処理能力が重要である

あらゆる大手の小売業者にとってのチャンスと脅威を理解するためには、なぜ人工知能が再び検討課題としてあがってきたかを理解することが有益です。初めてAI時代に突入した時から、二つの重要な事情が大きく変わっています。つまり、データと計算処理能力です。
計算処理能力の変化は理解しやすいでしょう。あなたが持っているスマートフォンは、十年前の大きなコンピュータと比べて、数百万倍もの処理能力を持っています。企業は、AIアルゴリズムを訓練するための、ほぼ無限の計算処理能力にアクセスすることが可能です。

もう一つの重要な要素は、特に小売業界における利用可能なデータの規模とその豊富さです。
人工知能システム、特に機械学習などの学習技術は、大規模かつ豊富なデータを基礎として発展しています。適切にデータを与えられた際には、そうしたシステムは、人間のアナリストが手動で見つけようとしてきたトレンド、パターン、そして相関関係を発見します。
そうした機械学習によるアプローチはデータ分析を自動化し、他の類似したデータについての有益な予測を行うことのできるモデルをユーザーが作り上げることを可能にします。

なぜAIは小売業界に適しているのか

様々な分野におけるAIの展開スピードは、いくつかの決定的な要素に左右されます。小売業界は特に、いくつかの理由でAIを展開するのに適した分野と言えます。
第一の要素は、検証と評価を行えることです。適切なセーフガードがあることで、大手の小売業者はAIを展開し、消費者の反応を検証して評価することができます。さらに、そうした企業は、最終的な収益に対する影響を非常に素早く評価することが可能です。
第二の要素は、ミスによる影響が比較的小さいことです。旅客機を飛ばしているAIエージェントはミスを起こすことが許されません。それによって人が死ぬかもしれないからです。小売業界に展開されるAIエージェントは、毎日数百万回の判断を行っていますが、全体としての結果がポジティブであれば、数個のミスをしても問題ありません。
Nuroはすでに、いくつかのスマートロボットを小売業界で実用化しています。大手の雑貨チェーンであるKrogerは、アメリカの消費者家庭に食料雑貨を届けるためにAIを取り入れています。

もっとも重大な変化の多くは、自動運転車や実体のあるロボットというよりは、AIの展開によって起こるでしょう。ショッピングエクスペリエンスを変容させる、AIが活用可能な場面をいくつか見ていきましょう。

買い物の癖

AIは、購入する製品からその購入方法まで、あなたの買い物時の行動の基本的なパターンを把握することができます。
こうした買い物とは、スーパーで定期的にお米を買うこと、酒屋でたまにワインを購入すること、地元のコンビニで金曜日の贅沢としてアイスクリームを買うことなどです。
在庫目録と販売データベースシステムが単純に個々の製品の購入をトラッキングするだけなのに対して、機械学習は十分なデータがあれば、買い物客の普段の習慣を予測することができます。そのシステムは、あなたが毎週月曜日の夜にリゾットを作るのが好きなことや、さらに複雑な行動、例えばたまに贅沢としてアイスクリームを買うことなども把握することができます。
大きな規模では、数百万人の消費者の行動を分析することで、スーパーマーケットは、何世帯のオーストラリアの家庭が毎週リゾットを作るかを予測することができるようになります。この仕組みは在庫管理システムに情報を提供し、例えばリゾットを作る消費者が多い店舗のアルボリオ米の在庫を自動的に最適化してくれます。
この情報はその後、取引のあるサプライヤーと共有され、より効率的な在庫管理と無駄のない物流業務が可能になります。

効率的なマーケティング

FlyBuysなどの従来型のロイヤルティプログラムのデータベースによって、スーパーマーケットは消費者がある特定の商品を購入する頻度(例えばアルボリオ米を週に一度購入するなど)を特定し、「アルボリオ米を購入しそうな顧客」と認識された消費者のグループにオファーを送ることができます。
新しいマーケティング技術は、すでにその商品を購入する可能性が高い顧客に販売を促進するだけにとどまりません。機械学習によるレコメンドはさらに、他の消費者から得られた数千件のデータが、頻繁に一緒に購入されていると示している、ガーリックブレッド、ティラミスなどのパーソナライズされた製品提案をプロモーションします。
効率的なマーケティングによって、割引を減らし、利益を向上させることが可能です。

動的な価格設定

スーパーマーケットが抱える価格設定の問題には、適切な製品に適切な価格を付け、適切なプロモーションを行う作業などが含まれます。
小売価格の最適化は複雑な業務で、それぞれの消費者、製品、取引など細分化したレベルでのデータ分析が必要になります。
効果的であるためには、限りない要因を検討しなければなりません、例えば、プライスポイントを時間、季節、天候、競合他社のプロモーションなどに応じて変更することで、販売結果にどのような影響があるかといった点です。

顧客からのフィードバック

これまでは、顧客からのフィードバックは、記入して意見箱に投函するフィードバックアンケートを通じて入手していました。こうしたフィードバックは読んだうえで対応をしなければなりません。
ソーシャルメディアが増加したため、それがフィードバックを世間に発信するプラットフォームとなりました。したがって、小売業者はソーシャルメディア用のスクレイピング・ソフトウェアを活用して、顧客に返答し、顧客の問題を解決し、会話によって彼らと関わろうとしています。
今後は、機械学習がそのような場合に貢献をしてくれるでしょう。機械学習とAIのシステムの登場によって、録画した顧客の音声コメントやビデオデータなどの、複数の乱雑な非構造化データのソースをはじめてバルク分析することが可能になるでしょう。

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窃盗の減少

オーストラリアの小売業者は、在庫切れによる損失で、45億オーストラリアドルを失っていると見積もられています。セルフレジの普及もそうした損失の一因となっています。
機械学習のシステムは簡単に数百万件の画像をスキャンし、顧客がレジの量りに置いた様々な種類のフルーツや野菜を認識する、カメラ付きのPOSシステムを実現してくれます。
システムは時間をかけて、その店舗で売られているあらゆる商品を認識するまでに改善し、きめ細かい分類(fine-grained classification)と呼ばれる作業なども可能になり、それによってネーブルオレンジとバレンシアオレンジを見分けることもできるようになります。したがって、桃を買う時にじゃがいもと入力してしまうような「ミス」は起こりえません。
長期的には、Amazon GoストアのようにPOSシステムは完全になくなるでしょう。

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人間の代わりに注文してくれるコンピュータ

音声を基に食料雑貨のリストを作成してくれる機械学習システムの機能は、急速に向上しています。

フランスの大手小売業者のCarrefourやアメリカの巨企業WalmartはすでにGoogleと提携を行っているため、 Google Duplexのようなデジタルアシスタントはすぐに、買い物リストを作成し、人間に代わって注文を行ってくれるようになるかもしれません。

進化を続けるAIショッピングエクスペリエンス

年を取ってライフステージを進んでいくと、時々体調を崩したり、結婚をして子供をもうけたり、仕事を変えることもあります。顧客の人生の状況や支出の習慣が変化すると、すでに不正検知のような分野で行っているように、モデルは自動的に調整をしてくれます。

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現在のリアクティブシステムでは、例えば顧客がおむつを買い始めると、それによってその顧客が家族を持つようになったと判断し、適切な製品のレコメンデーションを行うという作業を行います。
機械学習のアルゴリズムでは、その代わりに、葉酸やバイオオイルを購入するなどの行動をモデル化し、いつオファーを送るべきかを判断します。
こうしたリアクティブからプレディクティブ(予測的)マーケティングへの移行によって、顧客の買い物方法を変化させ、彼らが決して購入しようとはしていなかった商品の提案も行うことができるようになります。これらすべては、小売業者とその顧客にとってのAIが生み出したチャンスによって可能になったものです。

 

この記事は、The Conversation に掲載された「When AI meets your shopping experience it knows what you buy-and what you ought to buy」を翻訳したものです。